サマリー
1. 数理モデルとAIの融合による感染モデル
新型コロナウイルス感染症において,緊急事態宣言解除後の感染予測と,ワクチン接種の効果を予測した.予測期間は2021年3月から11月とし,人口流動を考慮したSEIRモデルとAI技術(進化的最適化)を用いて感染モデル推定の最適化を行うことで,2.6名/日の精度で60歳以上と59歳以下の2つの年代内および年代間での感染推定が可能となった.人口流動に伴う感染者流入リスクを一部考慮することで,市中感染者の滞留と加速度的な感染拡大現象が一定程度表現できるようになった.このモデルにおいて,昨年6月1日以降と同じ都民の行動変容(≒実効再生産数)があったとしてシミュレーションを実施した.
2. 年代グループ間の感染率推定
時系列の陽性確認者数から60歳以上と59歳以下の年代グループ間の感染率を推定した結果,59歳以下から60歳以上への感染は約0.5,60歳以上から59歳以下へは約0.1となり,約5倍の差が生じていることが判明した.
3. 英国型変異種の感染予測とワクチン接種効果を推定
東京都での英国変異種ウイルスの感染者予測を行った結果,3/21時点で10名の英国型変異種ウイルス感染者がいた場合,0.5%/日のワクチン接種だけでは第5波の感染拡大が防げないが,サーキットブレーカーの機動的発動と,59歳以下を少なくとも10%以上優先接種グループに追加できれば,感染拡大防止に有効であることが示された.以下の組み合わせ対策が推奨される.
• ワクチン0.5%/日・サーキットブレーカー発動1000人・59歳以下の10%を優先接種追加*
• ワクチン0.5%/日・サーキットブレーカー発動500人
• ワクチン1.0%/日・サーキットブレーカー発動1000人
*医療従事者(人口の4%相当)に加えて,介護/高齢者/障害者施設従事者,高齢者同居家族,クラスター発生施設,その他高リスク者/同居者などを優先接種対象に追加(人口の6%相当)
英国型変異種感染予測
東京都の感染者推移を年代別(60歳以上と59歳以下)でモデル化し、年代別にワクチン接種を実施する効果を予測
3/21の感染者数が260名、英国型変異種の感染者数が10名* 、昨年6月1日以降と同等の感染増加があったして、ワクチン接種なし
第5波ピーク : 10/20 1,433,000人
第5波重症者 : 11/04 171,000人
• 実効再生産数を50%アップさせるとした場合で予測
Public Health England, Investigation of novel SARS-CoV-2 variant Variant of Concern 202012/01 Technical briefing 5,2020
• 3/21 英国型変異種感染者が10名東京にいると仮定
• 3/21解除後の実効再生産数・人口流動数の推移は2020年6月1日以降と同等と仮定
第4波および第5波でピーク後の減少は,感染拡大に伴う外出自粛などの住民の行動変容に起因
• 変異株は3/23から感染拡大が始まると仮定
• ワクチン接種速度(2案)
3/5以降人口の0.02%/日に1回目接種, 3/15以降 0.04% , 3/22以降 0.05%(実測数)
3/27日後0.05%/日(合計0.1% 1回目+2回目)
1) 0.3%/日:4/12以降0.15%/日に1回目接種, 21日後に0.15%/日(合計0.3%, 接種者率90% )
2) 0.5%/日:4/12以降0.25%/日に1回目接種, 21日後に0.25%/日(合計0.5%, 接種者率90% )
流動リスクを考慮したSEIR機械学習モデル
従来型 全感染者実測(赤実線)予測(赤破線)
60歳以上感染者実測(紫実線)予測(紫破線) 59歳以下感染者実測(青実線)予測(青破線)重症者実測(黒実線)予測(黒破線)
変異型 全感染者予測(オレンジ破線)
60歳以上感染者予測(シアン破線) 59歳以下感染者予測(茶破線)
重症者予測(グレイ破線)