サマリー
1.オリンピックによる感染拡大をシナリオ推定
6/24までの東京都の感染者数から、オリンピック開催に伴い、22万人の新たな人口流動が発生すると想定して感染拡大を推定した。従来型+アルファ株変異種とデルタ株において,6/21以降のワクチン接種を
1%/dayで行い,緊急事態宣言解除後の規制を7月11日まで継続した場合のシナリオ推定を行った。
2.都外からのオリンピック来訪者が50%の場合、感染者は390名増加
オリンピックでの都外からの来訪者が全日程で50%(×22万人)の場合、感染者は400名増加し1850名*、重症者ピークも62名となった。新規感染者数が700名を超えた時点で、 2021年1月の2次宣言相当の制限を実施し、 300人で解除した場合、新規感染者数が960名、重症者も最大37名となった。
3.デルタ株の拡大が最大のリスク
インド由来のデルタ株変異種が、6月1日に都内市中で10名存在した場合、8月末に6500人程度の新規陽性者の発生と重症者が200名となるリスクがある(9月以降も増え続ける)。これに対して、新規陽性者が700名を超えた時点で、第3次緊急事態宣言(1次と2次の緊急事態宣言の中間相当)を実施することで、感染者のピークは1140名程度*に抑制できる可能性がある。
* これらは、2020年7月以降の東京都の感染状況をベースに試算しており、オリンピックによる行動変容の緩みのリスクは考慮していない。
4.64歳以下年齢別優先接種のリスク
デルタ株が拡大する状況で、1)64歳以下平等、2)15-39歳優先(3:1)、3)40-64歳優先(3:1)とした場合、3)の15-39歳優先接種は10月以降の感染拡大リスクがある。1)もしくは2)が推奨される。
アルファ株+オリンピック開催の影響評価
•6/21に緊急事態宣言を緩和して7/11まで継続
7月23日〜8月8日に22万人/日(50%が都外)の人口流動増加
1.オリンピック開催(22万人)
2.オリンピック無観客開催
3.オリンピック開催(22万人)、感染者700人で対策強化(2021年1月の2次宣言相当)300人で解除
赤:新規陽性者総数(15歳以上)
緑:新規陽性者数(15歳〜39歳)
青:新規陽性者数(40歳〜64歳)
紫:新規陽性者数(65歳〜)濃紫波線:重症者数
実線:実測数 波線:推定数
デルタ株+オリンピック開催の影響評価
•6/21に緊急事態宣言を緩和して7/11まで継続
7月23日〜8月8日に22万人/日(50%が都外)の人口流動増加
1.オリンピック無観客開催
2.オリンピック開催(22万人)、感染者700人で対策強化( 2021年1月の2次宣言相当)300人で解除
3.オリンピック開催(無観客)、感染者700人で対策強化(2020年4月1次と2021年1月2次宣言の中間の強度)300人で解除
赤:新規陽性者総数(15歳以上)
緑:新規陽性者数(15歳〜39歳)
青:新規陽性者数(40歳〜64歳)
紫:新規陽性者数(65歳〜)濃紫波線:重症者数
実線:実測数 波線:推定数
デルタ株年齢別接種の影響評価
•6/21に緊急事態宣言を緩和して7/11まで継続
7月23日〜8月8日に22万人/日(50%が都外)の人口流動増加
•感染者700人で対策強化(1次2次宣言中間相当)300人で解除
•65歳以上最優先接種し65歳以上が90%接種で64歳以下に接種開始
1.64歳以下平等
2.15-39歳 0.75, 40-64歳 0.25 (39歳以下90%接種で40歳以上へ全数)
3.15-39歳 0.25, 40-64歳 0.75 (40歳以上90%接種で39歳以下へ全数)
赤:新規陽性者総数(15歳以上)
緑:新規陽性者数(15歳〜39歳)
青:新規陽性者数(40歳〜64歳)
紫:新規陽性者数(65歳〜)濃紫波線:重症者数
実線:実測数 波線:推定数
デルタ株年齢別接種の影響評価
•6/21に緊急事態宣言を緩和して7/11まで継続
7月23日〜8月8日に22万人/日(50%が都外)の人口流動増加
•感染者700人で対策強化( 1次2次宣言中間相当)300人で解除
•64歳以下にも10%同時接種し65歳以上が90%接種で64歳以下に接種開始
1.64歳以下平等
2.15-39歳 0.75, 40-64歳 0.25 (39歳以下90%接種で40歳以上へ全数)
3.15-39歳 0.25, 40-64歳 0.75 (40歳以上90%接種で39歳以下へ全数)
赤:新規陽性者総数(15歳以上)
緑:新規陽性者数(15歳〜39歳)
青:新規陽性者数(40歳〜64歳)
紫:新規陽性者数(65歳〜)濃紫波線:重症者数
実線:実測数 波線:推定数
モデル設定
1.SEIR数理モデルとAI最適化手法による感染モデル
人口流動を考慮したSEIRモデルとAI技術(進化的最適化+準ニュートン法)を用いて感染モデル推定の最適化を行うことで、2.6名/日の精度で15歳〜39歳、40歳〜59歳、 65歳以上の3つの年代内および年代間での感染推定を行った。都外からの感染者流入推定値をモデルに組み込み、 2021年3月1日〜6月22日の感染者数からモデルを学習させた。重症者数は、過去3ヶ月のデータから統計モデルを構築し、それぞれの年代の感染者数推移から推定した。また,昨年の第1次緊急事態宣言解除と同等の都民の行動変容があったとして、昨年6月21日以降の実効再生産数と都内流動人口データを適用してシミュレーションを実施した*。
2.サーキットブレーカーの強度とワクチン接種効果を推定
アルファ株(従来株残存)とデルタ株を対象に、緊急事態宣言緩和の強度を第1次と第2次の緊急事態宣言の中間に設定した.また,デルタ株に対しては第1次緊急事態宣言の強度に設定した.
3.ワクチン効果設定
•デルタ株は,アルファ株に対して実効再生産数を50%アップさせるとした。
ワクチン効果は,アルファ株に対して、第1回で57%,第2回で94%の発症予防効果があるとし、デルタ株に対してはそれぞれ0.9倍とした。 3/1 – 6/22 の実効再生産数・人口流動数の推移は実測値を使用。6/23〜7/22は、直近の7日間移動平均Rtを使用し、7/23以降は2020/7/23以降と同等と仮定。ピーク後の減少は,感染拡大に伴う外出自粛などの住民の行動変容に起因するとした
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210610/k10013077751000.html
https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000787862.pdf
モデルの感染者数は、都内で感染した人全員の数となっているため、都外からきて感染したのち、都外へ戻ってそこで陽性者にカウントされる人も含んでいる。