昨年度版
人とモノの接触数についての調査(2021年12月)
(本事業のアウトプット)まだ感染拡大への影響について議論の多い「モノ」について、今後の研究者(本研究メンバーを含む)に提供する新データ
意外に接触物の多い場所に要注意。前スライドも総合的に見て、「(居酒屋に限らず)飲食店」「自社オフィス」 「宿泊所」は要注意
モデル(B)の前提情報 (※重症化率低位シナリオの場合)
・東京都1,400万人を想定
・5,000世帯≒1万エージェントからなるマルチレイヤーネットワーク
・東京都の人口と合わせるため、1エージェントが1,400人分の重み
・データは国勢調査の人口構成をベースとしてリサンプリング・合成された関西大学村田教授の人工合成データを使用
・本データには、世帯構成、年齢、性別、職業、住所等の情報が含まれており、その情報を用いて「家族レイヤー」「学校レイヤー」「職場レイヤー」「ご近所コミュニティレイヤー」「ランダム(旅行・移動等)レイヤー」等のネットワークレイヤーを生成
・レイヤーごとに接触の頻度および範囲(何人と会うか)を設定でき、例えば経団連等を通じたテレワーク目標の効果の事前見積もり、文科省による学校閉鎖・リモート授業の効果の事前見積もり、旅行会食自粛要請等の効果の見積もりといった政策意思決定の参考情報として活用可能なモデルとなっている
・現在のモデルには組み込んでいないが、感染者数推移等に加え、出会い減少による経済効果の試算といったことにも拡張可能
モデル(B)マルチレイヤーの考え方
想定したレイヤーの特徴
世帯: 世帯内で全結合し、他世帯とは完全に分離されたネットワーク
職業: 同一職業の人々がW-m0関係を遵守しつながったネットワーク
学校: 同一地域・同一学年の子供たちがW-m0関係を遵守しつつつながったネットワーク
ご近所: 距離の近いエージェント同士がW-m0関係を遵守しつつつながったネットワーク
ランダム: 特段のルールなくランダムにn人とつながるようルール化しつながったネットワーク
レイヤーを分ける理由
・人と人のつながり方のコンテクストによって、ネットワークの疎・密結合の関係性および接触の濃度・頻度が異なる
・コンテクストごとに取り付け・取り外しが可能で、また間引き・増幅することで、緊急事態宣言実施や景気浮揚政策の検討を行う材料として活用しやすい
・こういった事象をモデリングする上で、マルチレイヤー形状は非常に便利
モデル(B)マルチレイヤーマルチSEIRフロー
※1. v1_det = min(v1, v1 – 1回目ワクチン接種後経過週数 * v_det_rate / v_det_term)
※2. v2_det = min(v2, v2 - 2回目ワクチン接種後経過週数 * v_det_rate / v_det_term)
※3. v3_det = min(v3, v3 - 3回目ワクチン接種後経過週数 * v_det_rate / v_det_term)
モデル(B)マルチレイヤーマルチSEIRエージェント:設定
・データ: 関西大学村田教授の人工合成データ
・感染伝搬モデル:
✔️マルチエージェントベースのワクチン効果考慮後のSEIRSモデルを採用
✔️Iの状態を軽症と重症、さらに重症から死亡への推移を考慮
✔️各々のレイヤーを独立に間引いたケースで計算を実施
✔️オミクロン株の平均潜伏期間を踏まえ1タイムスタンプ1日に変更
・ワクチン: 接種によりS/V1/V2/V3のノードのEへの遷移確率を▲X%低下。ワクチン効果は段階的に減衰
モデルBの結果:新規感染者数
各レイヤーでのつながり関係を2022年2月の最新アンケート結果に合わせ補正を行った。結果、新規感染者数については、まん延防止を継続する(下の段)場合、新規感染者は今後緩やかに減少していくことが予想される。他方解除した場合、W補正7日ルール並みの接触範囲に拡がると最大10万人弱まで再度増加に転じる可能性もある。
モデルBの結果:重症(中等症以上レベル)感染者数
重症化リスク小(デルタの10分の1)程度であれば、いずれのシナリオにおいても重症感染者数は低位水準に収まる見込み。他方リスク大の場合、シナリオによっては3月第一週頃をピークに8千人台となる可能性もある。
Appendix: MLNの各レイヤーの生成ロジック
・世帯
・職業
・学校
・距離
・ランダム
※データのサンプリングは、指定した世帯数をランダムサンプリングするので世帯数の指定は出来るがノード数の指定は出来ない
世帯
・概要
・世帯ごとにクリークを形成するレイヤー
・パラメータ
・なし
・生成ロジック
・同一のhousehold_idを全結合
職業
・概要
・industry_Wとindustry_m_0に基づき制約付きネットワークを形成するレイヤー
・パラメータ
・industry_W: 他人と繋がる上限数 (industry_W - industry_m_0だけ他人の手を受け入れる)
・industry_m_0: 自ら伸ばす手の本数
・生成ロジック (擬似コード)
学校
・概要
・児童がschool_Wとschool_m_0に基づき制約付きネットワークを形成するレイヤー
・パラメータ
・school_W: 他人と繋がる上限数 (school_W - school_m_0だけ他人の手を受け入れる)
・school_m_0: 自ら伸ばす手の本数
・生成ロジック (擬似コード)
距離
・概要
・distance_Wとdistance_m_0に基づき距離から制約付きネットワークを形成するレイヤー
・パラメータ
・distance_W: 他人と繋がる上限数 (distance_W - distance_m_0だけ他人の手を受け入れる)
・distance_m_0: 自ら伸ばす手の本数
・生成ロジック (擬似コード)
ランダム
・概要
・ランダムグラフから成るレイヤー
・パラメータ
・p: エッジを選択する確率
・生成ロジック
・n(n - 1) / 2 通りのエッジから確率 p で採用するエッジを決定しグラフを生成