参考資料:年代別新規陽性者数予測モデル
対象年代カテゴリを、0-9歳、10-64歳、65歳以上の3区分とし、深層学習(LSTMモデル)に基づき、それぞれの年代の過去の陽性者数・死者数、ワクチン有効率を入力することで、年代別の新規陽性者数・死者数を予測するモデルを開発。
これまで開発してきた各都市における全人口を対象とした予測モデルを拡張し、年代カテゴリを分けることで、各年代の特徴を考慮。また、ワクチンの4回目接種率の感染状況への影響も推計した。
※オミクロン株のみを考慮
*NTTデータから提供されたTwitterデータを用いて東京大学生産技術研究所豊田研にて作成
1. E. A. Rashed and A. Hirata, “Infectivity upsurge by COVID-19 viral variants in Japan: evidence from a deep learning modeling.” Int. J. Environ. Res. Public Health, 2021.
まとめ
・BA5系統に代表される新規変異株の感染力および免疫回避を仮定し、新規陽性者数および死者数を試算。
・換気(気象)の影響は考慮していない
・現役世代が拡大し、それ以外に波及されていく傾向
・感染力が1.2倍あるいは1.1倍、免疫回避が50%の場合
一日当たりの最大感染者数:14000人、8000人
一日当たりの最大死者数度:20人、10人
*重症化予防効果は、従来のオミクロン株と同程度と仮定。
・オミクロン株(第6波)以降、感染力が相対的に大きくなったため、行動制限の効果は限定的である可能性。但し、行動制限がない場合には、減少スピードが遅い。
今回考慮したシナリオ(BA.5系統に代表される変異株の考慮)
東京都モニタリング会議資料(2022/6/23)1に基づき、BA.2系統からBA.5系統への移行を設定し、
9月末までの新規陽性者数、死者数を予測する。
【感染力および免疫回避の影響】
・ BA.5系統の感染力を下記の通りと仮定し、予測を行った。但し、これまでの文献2,3からは、その定量的な値は示されていないため、近似的に設定。
- 感染力1:現在の主流株であるBA.2に対して、感染力が同じ、ワクチンによる感染予防効果が0.8倍になる。
- 感染力2:BA.2に対して、感染力が1.1倍、ワクチンによる感染予防効果が0.5倍になる。
- 感染力3:BA.2に対して、感染力が1.3倍、ワクチンによる感染予防効果が0.5倍になる。
・ ワクチンは、65歳以上に対する4回目接種の影響を考慮
【行動変容の影響】
・ BA.5系統 感染力2の場合を想定して、行動変容の影響について予測。
- 現在の行動レベルが9月末まで続いた場合
- 拡大傾向が続く中、7/31より重点措置を行った場合
- 7/1より、人流・行動が徐々に回復、コロナ禍前の状況まで回復した場合
* 無症状感染者数は、新規陽性者数の4倍いると仮定。
1. https://www.bousai.metro.tokyo.lg.jp/taisaku/saigai/1021348/1021756.html
2. Hachmann NP. et al.. 2022. “Neutralization Escape by the SARS-CoV-2 Omicron Variants BA.2.12.1 and BA.4/BA.5.” MedRxiv. https://www.medrxiv.org/content/10.1101/2022.05.16.22275151v1. (preprint)
3. Wang Q. et al.. 2022. “SARS-CoV-2 Omicron BA.2.12.1, BA.4, and BA.5 subvariants evolved to extend antibody evasion.” bioRxiv. https://www.biorxiv.org/content/10.1101/2022.05.26.493517v1. (preprint)
東京における新規陽性者数推定結果(感染力および免疫回避の影響)
人流・行動は、7月以降も徐々に回復すると仮定(P7以降の行動抑制なしに相当)。
感染力1:現在の主流株であるBA.2に対して、感染力が1倍、ワクチンによる感染予防効果が8割に低下する。
感染力2:BA.2に対して、感染力が1.1倍、ワクチンによる感染予防効果が5割に低下する。
感染力3:BA.2に対して、感染力が1.2倍、ワクチンによる感染予防効果が5割に低下する。
行動変容が起こった場合
BA.5が拡大した場合における行動変容による影響を推定。(感染力は1.1倍、10-64歳のワクチン接種は現状のまま推移)
参考資料:年代別新規陽性者数・実効再生産数(東京)
東京都における年代別の感染状況(下図)より、年代によって感染の傾向が異なることが分かる。