サマリー
・コロナ禍が長期化する中で、保育園の休園が増加
・特に第六波では、保育園の休園数が激増
・休園のコスト:「園児一人の1日の自宅待機」は「労働者一人の生産1日分の損失」を意味(⇔休校)
・休園(休校)の児童への影響については分析事例が多い一方、休園(休校)の実態は不明
・休園数の公表データは、全国レベルのストック値(厚労省、1~2週間に1度更新)
・関心事① 休園・休校の状況
・第6波、第7波において、1園当たり休園期間は何日に及んだのか?
・児童/職員の感染事例が何件あった場合に休園が決定されたのか?
・自治体間で休園状況に差はあったのか? (都市vs地方、など)
・関心事② 休園による保護者の就労への影響
・本分析では、①休園・休校の状況を分析
・各自治体における休園(休校)事例の公開状況から、自治体ごとの休園(休校)状況に関するデータを作成
(東京23区、及び周辺3県の市部が対象)
・データを元に定量分析
推計モデル
・休園日数が平均d(t)日の指数分布に従うと仮定
・N(t) = N(t-1) + ΔN(t) - 7/d(t)* N(t-1)
・N(t) : 時点tにおける休園数
・ΔN(t) : 時点tにおける新規休園数
・d(t) : 時点tにおける休園日数
推計モデルにおける休園日数の定義
・保育園の休園日数の規定はない
・文部科学省の定める休校日数※1は、一般的な濃厚接触者の隔離期間※2に連動
・本推計では、自治体レベルでのデータを根拠に、保育園の休園日数を定義
(一般的な濃厚接触者の隔離期間とほぼ連動)
現時点における分析
休園期間
・第6波の感染拡大局面で(2022年1月)、ガイドラインが改訂され、休園期間の目安は短縮化された
・しかし実際は、いくつかの自治体で、逆に休園期間が延びた
・保健所によるチェック・施設の除菌作業・職員のPCR検査が逼迫し、保育の再開までに時間を要した可能性
・2月以降は、多くの自治体で休園期間が短縮化した
・第7波では、さらに短縮化
休園の根拠となる感染児童数/感染職員数
・第7波では、第6波に比べ、休園決定時点での職員の感染者数が児童の感染者数よりも相対的に増加した
・第6波までの休園は、濃厚接触者の追跡・隔離政策の一環として実施(さらなる感染拡大の予防)
・第7波における休園は、職員が感染したことで保育サービスが提供できずに休園を余儀なくされたケースが増加した可能性
休園により保育園に通えなかった児童の数
(2月末時点での推計)
モバイル空間統計データ(人口増減)
・影響度大:認可外保育所の休園規模が2倍、一部休園の規模が1.5倍
・影響度小:認可外保育所の休園規模が半分、一部休園の規模が半分
・2月に渡り、一部・全面休園により約9万人(7~14万人)の児童が通園できなかった
→ 在園児童数299万人の3%(2~5%)に相当
自治体レベルデータの構築
ソース
・市区町村のホームページ上での、休園・休校事例のアナウンス
対象自治体
・東京都23区と、千葉県・埼玉県・神奈川県の市部を対象
・データが得られた自治体の数
・東京都:11
・千葉県:2
・埼玉県:1
・神奈川県:1
期間の定義
・第6波:2022年1月1日~ 2022年6月14日
・第7波:2022年6月15日~
サマリー
これまでの分析から
・第6波の感染拡大期には、ガイドライン上の休園日数が短縮化された一方で、実際には日数が延びていた自治体もあった
・休園の根拠となる感染事例は、第7波においては職員のウェイトが高い自治体もあった
今後
・濃厚接触者の追跡・隔離政策の自治体間の違いを考慮
・データの拡充化(周辺3県にも拡大/休校も調査)