2021.02.01

感染抑止環境下での経済活性化の施策を支援するための人流リアルタイムモニタリングに基づく地域経済インパクトシミュレーション #3

研究開発担当

東京大学空間情報科学研究センター 柴崎亮介/株式会社三菱総合研究所 中條覚

対応するリサーチクエッション

「第二波対策」として必要な「感染予測・対策の効果検証」(SIRモデルの代替となるモデルの確立)、「必要な医療リソース(病床・医療物資等)の需要予測と最適配置」


研究の全体像

研究目的

  1. 1.接触制限・移動制限による経済インパクトの把握
  2. 2.接触制限・移動制限による感染者数の予測

全体像

  1. i.移動・滞在活動の変化をGPSデータより推定
  2. ii.移動・滞在活動の変化が経済及び感染拡大に与える影響を推定

1. 移動・滞留活動の変化に伴う経済インパクトの推定

① 移動・滞留活動による支出の変化の推定

  • 「旅行トリップ※1」及び「旅行以外のトリップ」から、「旅行」及び「旅行以外」による消費額の変化を推定※2(支払い場所ベース、2020年/2019年比)
  • GoToトラベルキャンペーン開始後、10月には旅行による消費額は前年比水準で8割程度まで回復
  • 小売・飲食・宿泊の消費額の年間合計をみると、小売は、緊急事態宣言解除後、徐々に回復傾向にあり、年間合計額は前年より増加
     一方、飲食及び宿泊は、宣言発令以降、減少が続き、年間合計額は、前年より大きく減少

図 旅行及び旅行以外の推定消費額変化(2020年/2019年比、全国)

図 消費額の変化(2020年- 2019年、全国)

※1: 旅行トリップ(観光・出張含む)の定義:「自宅からの移動距離が80km以上」かつ「勤務地への移動ではない」トリップを旅行トリップとして推定。なお、80km未満での立ち寄りの場合には、旅行トリップとは判断していない。

※2:滞在時間あたりの消費支出原単位や支出額の推定方法については、 LocationMind社と東京都市大学・秋山研究室との共同研究の成果を利用

出典)利用データ:LocationMind社が提供するLocationMind xPop(LocationMind xPopのデータは、NTTドコモが提供するアプリケーションサービス「ドコモ地図ナビ」のオートGPS機能利用者より、許諾を得た上で送信される携帯電話の位置情報を、NTTドコモが総体的かつ統計的に加工を行ったデータを使用。位置情報は最短5分ごとに測位されるGPSデータ(緯度経度情報)であり、個人を特定する情報は含まれない。)

1. 移動・滞留活動の変化に伴う経済インパクトの推定

② 都道府県間への経済波及効果の推定

  • 小売・飲食・宿泊の消費額の変化が他産業に与える経済波及効果(一次波及)を都道府県間産業連関表※3を用いて推定(都道府県単位)
  • 産業全体では、小売関連は、約4兆円の経済効果、飲食関連は約6兆円、宿泊関連は約3兆円の経済損失と推定(全国)
  • 都道府県別にみると、小売関連は、特に沖縄県の経済損失、飲食・宿泊関連では、特に三大都市圏の経済損失が大きい

図 消費額変化に伴う経済波及効果(都道府県別、2020年、小売・飲食・宿泊)

小売

飲食

宿泊

LocationMind xPop © LocationMind Inc.

※3:東京大学と株式会社帝国データバンクとの共同研究で得られた研究成果を利用

出典)利用データ:LocationMind社が提供するLocationMind xPop(LocationMind xPopのデータは、NTTドコモが提供するアプリケーションサービス「ドコモ地図ナビ」のオートGPS機能利用者より、許諾を得た上で送信される携帯電話の位置情報を、NTTドコモが総体的かつ統計的に加工を行ったデータを使用。位置情報は最短5分ごとに測位されるGPSデータ(緯度経度情報)であり、個人を特定する情報は含まれない。)

2. 人々の移動・滞留の変化に伴う感染者数の予測

  • 「都道府県別及び施設種類別の感染のしやすさの違い」「人の移動・滞在」を考慮した感染者数予測モデルを構築
  • 施設種類ごとの感染率(β)が異なることを明示的にモデル化し、パラメータを推定(感染のしやすさパラメータが、ナイトクラブ・飲食店・店舗の施設数の線形関数で表現されると想定)
  • 本モデルを活用し、東京都のナイトクラブ等について、営業店舗数を制限した場合での感染者数のシミュレーションを実施し、営業をストップする店舗が多いほど感染者数が減少することを確認※4

図 施設別の感染率パラメータ及び感染者数(関東1都3県)

注)フィッティングの粒度:週別、フィッティングの期間:2020-02-01~2020-12-11、予測期間:2020-12-12~2021-01-06(計26日)


図 感染症対策のシミュレーション結果

東京都のナイトクラブの50%が営業をストップした場合の感染数の予測

東京都のナイトクラブの100%が営業をストップした場合の感染者数の予測

※4:上記の結果は、東京大学と(株)ブログウォッチャーとの共同研究で得られたモビリティデータの解析結果を利用

3. 感染者数の変化が人々の消費支出に与える影響分析

  • 2020年4月以降の消費支出(小売、飲食、宿泊)の回復状況が、感染者数の増加により影響を受けている状況を統計分析。これに基づき、関東1都3県(東京都・千葉県・神奈川県・埼玉県)について、2020年12月感染者数予測結果から、12月の消費支出を予測。実績とよく整合することを確認※5
  • さらに、12月の感染者が仮にゼロとなった場合の消費支出の増加を推定。1都3県とも大きく増加し、回復が加速されると期待できる。

図 累積感染者数を考慮した、区市町村別・消費支出額の回復モデルによる予測値(2020年12月 単位:円)

モデルは、2020年4月から11月までのデータを用いて、区市町村毎に構築し、12月の消費支出額を予測

LocationMind xPop © LocationMind Inc.


図 東京都における消費支出額の回復に関する感度分析結果の例

12月の新規患者数が仮にゼロになると、消費支出額は大きく回復する

LocationMind xPop © LocationMind Inc.

※5:上記の結果は、東京大学と(株)ブログウォッチャーとの共同研究で得られたモビリティデータの解析結果を利用

出典)利用データ:LocationMind社が提供するLocationMind xPop(LocationMind xPopのデータは、NTTドコモが提供するアプリケーションサービス「ドコモ地図ナビ」のオートGPS機能利用者より、許諾を得た上で送信される携帯電話の位置情報を、NTTドコモが総体的かつ統計的に加工を行ったデータを使用。位置情報は最短5分ごとに測位されるGPSデータ(緯度経度情報)であり、個人を特定する情報は含まれない。)