2021.03.08

人の行動様式とスモールワールド感染 ネットワーク に基づく感染拡散分析

研究開発担当

慶應義塾大学理工学部 栗原聡

対応するリサーチクエッション

「第二波対策」として必要な「感染予測・対策の効果検証」(SIRモデルの代替となるモデルの確立)、「必要な医療リソース(病床・医療物資等)の需要予測と最適配置」


目的: 感染防止シミュレーションによる感染収束に向けた取り組みの提案


分析1:SNS(Twitter)から見えてくるもの(12月末日まで)

ツイート数の変化

12月のツイート数は9月,10月,11月と比較して若干の増加傾向にあるが,

感染者数: 第1波<第2波<第3波 

ツイート数: 第1波>第2波>第3波 (リツイートの割合も低下している)

※社会的なインパクトはひらすら減少

ツイート本文中に「新型肺炎」,「コロナ」,「ウイルス」,「ウィルス」,「武漢」のいずれかが含まれているもの,もしくは,いずれかのハッシュタグの文中に「新型肺炎」,「コロナ」のどちらかが含まれているものである.期間中におけるツイート数は92,764,825 件,リツイート数は209,937,095 件であり,合計件数は302,701,920件である.

ツイートの感情変化

流行り始める第1波の前の段階では,「怖」の感情が大きく,全く未知のものへの不安感や恐怖感が見られるものの,それ以降,低下する.

第2波や第3波の感染者増加時期(波の増加途中)では,「怖」の感情が微増するものの,第3波に関しては,第2波よりも持続期間が短い.

分析にはML-Ask[Michal 2017] を使用し,個々のツイートを10 種類の感情,「喜」,「怒」,「哀」,「怖」,「恥」,「好」,「厭」,「昂」,「安」,「驚」に分類
 

※Twitterデータは東京大学@鳥海不二夫研究室より提供


分析2:報道番組から見えてくるもの(12月末日まで)

コロナに関する総報道時間の時系列変化

→総じて減少傾向にあるが年末になって上昇中

第1波以降,報道番組において関心が低下する傾向.

第3波で少し関心が出ているが軽微な状態.

※第1波のころは番組出演者もリモート出演であったが,現在は通常形態(視聴者はこれを見ている).

 ※報道データは株式会社エム・データ,株式会社インテージより提供


人の行動モデル:不安や危機感に基づく動機1社会経済的行動欲求に基づく動機2の動的平衡で構成

・人のリスク的行動の頻度は冪乗則

  1.  →どんな人でも,たまにリスク的な行動をしてしまう.
  2.  →ごく少数の人が,頻繁にリスク的な行動をしてしまう.


不安係数:未知に対する脅威がある状況で高く,脅威が去ると急激に低下する(動物的本能に近いもの)

行動係数:若年齢ほど大きくなる(社会経済的な行動欲求)※不安要素がなくなることで上昇する.

感染対策係数:マスクや三密防止策で上昇する

第1波では行動変容1が起きた(不安係数) → 未知で状況の詳細が不明なコロナウィルスへの漠然として危機感 → 1、2名の感染が大きな話題となり,緊急事態宣言は行動変容1を起こす契機となった(有名人の訃報も結果的に効果があった) → マスク着用や3密回避を促す効果を促した(感染対策係数の上昇).

第2波以降は主に行動変容2が起きている → 感染メカニズムや感染の詳細な状況等が判明すると危機意識はなくなり,もはや行動変容1は起きない → 行動変容2は社会経済的な行動欲求(行動係数)→ 仕事(最低限の経済活動)での移動は停止しないが,旅行などは自粛する度合いが高い → マスクや三密回避という行動を制約する度合いと自由に行動したいという欲求とのトレードオフ. 


人の行動ネットワーク:感染ネットワークはスモールワールドネットワーク型

スモールワールドネットワーク:

コミュニティ(密なネットワーク) 同士が接続されたネットワーク

コミュニティ間をまたぐ感染により,感染が急激に拡大してしまう.


モデルケースでのシミュレーション

東京と大阪で感染が発生し,那覇と離島には感染者が存在しない状態からシミュレーションを開始する.

※那覇と離島は他地域からの感染者の移動による高リスク行動により感染が発生するというシナリオ.

頻度の少ない移動であっても高リスク行動を伴うことで,非感染地域の感染蔓延と医療への圧迫を招いてしまう.

高リスクな行動を伴う移動の頻度を下げることで医療対策脆弱地域での感染蔓延度を低くすることが期待できる.


人の行動モデル・行動ネットワークに基づくシミュレーション:第1→2→3波の感染推移の再現

都市や地方都市・離島といったコミュニティ(地域)をまたぐ感染が感染を急拡大させてしまう.


予測:緊急事態宣言解除時期による感染状況の違い(ワクチン導入あり・接種率100%)

ワクチンを導入した設定で,8月五輪開催時あたりまで自粛するケースと,2月上旬で解除するケースでシミュレーション。(ワクチン効果が高く、接種率100%であることを仮定。)

8月まで自粛する場合 ※ワクチン導入時


2月上旬に自粛を解除する場合 ※ワクチン導入時



予測:緊急事態宣言解除の時期/段階的解除と感染リバウンドの関係


予測:ワクチン摂取率の影響(採取接種率60%とすると)

ワクチンを導入した設定で,8月五輪開催時あたりまで自粛するケースと,2月上旬で解除するケースでシミュレーション。

 理由:人の行動は冪乗則に従う→ごく一部の人/たまの行動が感染を拡散させてしまう

8月まで自粛する場合 


2月上旬に自粛を解除する場合