目次
1.サマリー
2.研究内容・研究結果の詳細
・新型コロナ感染者の呼気ウイルスの検出:通常呼吸と発声による差異
・新型コロナ感染患者の呼気オミックス解析:ウイルス診断と重症化バイオマーカーの確立とAI診断法の開発
3.今後の研究プラン
1.サマリー
■ 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者から呼気凝縮液(EBC)を無侵襲かつ非観血的に採取し、ウイルスRNAゲノムのPCR解析および質量分析によるプロテオーム解析を用いた新型コロナウイルスの検出について調査した。
■ 主に、COVID-19診断のための、呼気凝縮液の有用性、呼吸方法の差異の検討、重症度バイオマーカーの開発を実施した。
■ COVID患者の通常呼気と比べて、発声検体から高率にウイルスが放出された。また、肺炎重症化のバイオマーカーとしての可能性を有する呼気代謝物を見出した。
【調査目標】
・軽症・中等症の新型コロナウイルス感染患者を対象に呼気凝縮液(exhaled breath condensate, EBC)の新型コロナウイルスの検出
・呼吸方法によるEBC中のウイルスの放出効率の差異の検討(深呼吸、発声など)
・呼気オミックスによる病態、重症度を反映するバイオマーカーの開発
2.研究内容・研究結果の詳細
新型コロナ感染者の呼気ウイルスの検出:通常呼吸と発声による差異の検討
・新型コロナウイルス感染患者を対象に呼気凝縮液の新型コロナウイルスPCR解析を行った。
【結 果】
1.予備的な定性的な検討では、呼気陽性者6名すべてから発声においてウイルスが検出された。
2.さらに、定量的なPCR解析結果、呼気陽性患者において発声でより沢山のウイルスが検出された。なお、事例によっては呼気中に大量のウイルスが放出されており、呼気エアロゾル中のウイルス量は最大で一回の呼気(ひと息)で数千個に及ぶものと推定される。
・感染者の通常呼気(深めの)と比較して、発声検体から高率に、また、時に大量の新型コロナウイルスが検出された。
・呼気を用いた無侵襲PCR検査法が、呼気エアロゾルを介する空気感染経路におけるスーパースプレッダーの検出に有用であることが示された。
2.研究内容・研究結果の詳細
新型コロナ感染患者の呼気オミックス解析:ウイルス診断と重症化バイオマーカーの確立とAI診断法の開発
【背 景】
我々はこれまで呼吸器(気道・肺)における新規代謝物が呼気中に放出されること見出した。そこで呼気オミックスを駆使して感染者の呼気代謝物解析を行った。
【結 果】
呼気中の新規代謝物のレベルが、健常者(12名)と比べて感染患者(CT肺炎像+:12名)において著しく上昇し、病状の回復に伴って減少した。
特に、代謝物Aは、重症化時に顕著に高く、肺炎の重症化のバイオマーカーとして応用可能である。
3.今後の研究プラン
・今後、呼気中のウイルスゲノムに加えてウイルスタンパク質を検出することで偽陰性感染者やスーパースプレッダーを確定し効果的な感染防止対策に資する。
・さらに、ウイルス検出のみならず、肺炎診断やサイトカインストームおよび肺炎重症化の予測・バイオマーカー確立と呼気オミックスAI診断法の確立を目指す。