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室内環境におけるウイルス飛沫感染の予測とその対策 #7
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理化学研究所/神戸大学
本資料の構成
•飲食店における感染リスクと対策
•ベースケース(換気装置が作動している状態)
•対策1:エアコン・厨房ダクトを作動させた際の効果
•対策2:対策1+パーティションを設置した場合の効果
•対策3:対策1+距離を取った場合の効果
•対策4:ワクチン接種の効果
•卓上排煙ダクトによる感染対策
飲食店における飛沫感染リスク評価と対策
•飲食店における飛沫感染リスクを評価するため、16人程度が入る小型の店舗(約44㎡)を想定し、シミュレーションを行った。
•室内に1名の感染者が滞在するとして、在室者1名の感染確率(参照:P.18 )を求めた
•滞在時間は1時間で、感染者は30分間大声で話していることを想定

提供:理研・神戸大,
協力:鹿島建設・ダイキン工業・数値フローデザイン・豊橋技科大
飲食店における感染リスク評価と対策(ベースケース)
•感染対策を取っていないベースケースにおいて、1名の感染者がいる店に1時間いた場合の感染確率は一人当たり2.48%となる。
•風下側の1, 2, 5, 6, 10, 14の座席に座った場合には、感染するリスクが高くなる。
•風上側の3, 7, 8, 9, 15の座席に感染者が座った場合には、他者に感染させるリスクが高くなる。
•感染者との位置関係により、感染確率は最大78.8%まで増加する(9番が感染者で10番に座った場合)。
•誰が感染者かわからない状況では、場所による極端なリスクの差異を作らないことが大切である。

提供:理研・神戸大,
協力:鹿島建設・ダイキン工業・数値フローデザイン・豊橋技科大
飲食店における感染リスク評価と対策(対策1:エアコン・厨房ダクトを作動)
•エアコンと厨房ダクトを作動させることで、一人当たりの感染リスクは2.48%から2.07%に低下した。
•飛沫・エアロゾルがより広い範囲に広がるが薄められることで、全体的にはリスクを分散させる効果がある。
•強い風下になる場合、局所的に感染リスクが高まる場合がある(エアコンの風下になる3, 5, 7の感染リスクが高まった)。
•空気の流れの影響を受け、2m以上の距離を開けた場合でも感染リスクが高い関係がある。
8⇒3、14⇒7、14⇒11等(感染者の位置⇒感染リスク評価者の位置)

提供:理研・神戸大,
協力:鹿島建設・ダイキン工業・数値フローデザイン・豊橋技科大
飲食店における感染リスク評価と対策(対策案:パーテーションの設置)
•パーテーションを設置した場合の感染リスクの低減効果についてシミュレーションを行った。

•テーブルのサイズ:120x60cm
•テーブル高さ:77cm
•カウンター高さ:89cm
•パーティション高さ:60cm
飲食店における感染リスク評価と対策(対策2:対策1+パーテーションの設置)
•エアコンと厨房ダクトを作動させることに加えて、パーテーションを設置することで一人当たりの感染リスクの平均は、 2.48%から0.53%に大きく低下した(部屋全体でリスクを約80%提言した)。
•9と16の座席を除く、すべての座席において感染リスクが低下した。
•一部、リスクの高い位置関係が残っている(6⇒5, 8⇒7, 15⇒14(感染者⇒感染リスク評価者))。

提供:理研・神戸大,
協力:鹿島建設・ダイキン工業・数値フローデザイン・豊橋技科大
飲食店における感染リスク評価と対策(対策案:座席間の距離を取る)
•座席間の距離を取った場合の感染リスクの低減効果についてシミュレーションを行った。

•テーブル席 横:60㎝ ⇒ 77cm、対面:88cm ⇒ 172cm
•カウンター席 55cm ⇒ 100cmとした。
飲食店における感染リスク評価と対策(対策3:対策1+距離を取る)
•エアコンと厨房ダクトを稼働させることに加えて、座席間の距離を取ることで、一人当たりの感染リスクは、2.48%から0.64%に低下した(部屋全体でリスクを約75%削減)。
•感染リスクの偏りは通常状態、対策1・2と比較してより小さくなっている(最大値21.5%)。

提供:理研・神戸大,
協力:鹿島建設・ダイキン工業・数値フローデザイン・豊橋技科大
飲食店における感染リスク評価と対策(対策4:ワクチン接種)
•ワクチンによる感染リスクの低減効果についてシミュレーションを行った(前提条件は下記)。
•感染者も含め、全ての人がワクチンを接種したと想定:ワクチンの効果は95%と仮定1)
•1名の感染者(ワクチン接種済み)がいると想定:唾液中のウイルスは1/4に低下と仮定2)
•一人当たりの感染リスクは、2.48%から0.04%まで低下した。

1)Ref: Polack FP, Thomas SJ, Kitchin N, et al. Safety and efficacy of the BNT162b2 mRNA Covid-19 vaccine. N Engl J Med 2020
2)M. Levine-Tiefenbrun et al., Brief communications, nature medicine, vol. 27, pp.790-792 (2021)
提供:理研・神戸大,
協力:鹿島建設・ダイキン工業・数値フローデザイン・豊橋技科大
飲食店における感染リスク評価と対策(滞在時間と変異株の影響)
•滞在時間が減少/増加することによる感染リスクへの影響についてシミュレーションを行った。
•90分滞在した場合の一人当たりの感染リスクは、3.36%となる。
•従来株と同じ感染リスクに到達するのに変異株は半分以下の時間となる。

滞在時間ごとの滞在者1名の感染確率

※感染者はどの座席に座っているか分からない場合を想定
※変異株はデルタ(インド)株(感染力2倍程度)を想定
提供:理研・神戸大,
協力:鹿島建設・ダイキン工業・数値フローデザイン・豊橋技科大
卓上排煙ダクトによる感染対策
•卓上排煙ダクトによるリスク低減効果についてシミュレーションを行った(前提条件は下記)。
•テーブル席に着座している4人のうち1名が感染者の場合を想定
•1時間滞在し、感染者は30分(前・横・斜めの同席者に10分ずつ)大声で話しかける

シミュレーション条件

卓上排煙ダクトによる感染対策
•感染者(左下)が正面に座っている人と会話した場合における飛沫の拡散状況
ダクト offの場合
ダクト onの場合
提供:神戸大・理研,
協力:鹿島建設・ダイキン工業・数値フローデザイン・豊橋技科大・京工繊大・東工大・九大
卓上排煙ダクトによる感染対策
•感染者(左下)が斜め向かいに座っている人と会話した場合における飛沫の拡散状況
ダクト offの場合
ダクト onの場合
提供:神戸大・理研,
協力:鹿島建設・ダイキン工業・数値フローデザイン・豊橋技科大・京工繊大・東工大・九大
卓上排煙ダクトによる感染対策
•感染者(左下)が横に座っている人と会話した場合における飛沫の拡散状況
ダクト offの場合
ダクト onの場合
提供:神戸大・理研,
協力:鹿島建設・ダイキン工業・数値フローデザイン・豊橋技科大・京工繊大・東工大・九大
卓上排煙ダクトによる感染対策
•卓上排煙ダクトのON/OFFによる感染リスクを比較した。
•卓上排煙ダクトを稼働させることにより、感染リスクを半分程度に下げることができる。(感染者の正面に座っている場合には、三分の一まで下げることが可能となる)
1時間滞在した場合における感染確率


提供:神戸大・理研,
協力:鹿島建設・ダイキン工業・数値フローデザイン・豊橋技科大・京工繊大・東工大・九大
卓上排煙ダクトによる感染対策
•卓上排煙ダクトのON/OFFによる感染リスクの時間変化についてシミュレーションを行った。
•卓上排煙ダクトを稼働させることにより、感染リスクを低減できる。


提供:神戸大・理研,
協力:鹿島建設・ダイキン工業・数値フローデザイン・豊橋技科大・京工繊大・東工大・九大
感染確率の計算方法
•通常呼吸を想定して、ある時間に吸引する飛沫の総量(ml)をシミュレーションにより予測した。
•飛沫に含まれるウイルス数を仮定し、呼吸により体内に侵入するウイルス数(N)を算出。
•感染に至るウイルス数(No)を過去のクラスターイベントより仮定して、以下の式(ポアソン過程)で感染確率を推定(文献*より)。


感染確率は、想定する唾液に含まれるウイルス密度や感染に至るウイルス数で大きく変化します。値そのものは参考値として、対策の前後や場所による差等の相対値としてみてください。
(*) Prentiss MG, Chu A, Berggren KK. Superspreading Events Without Superspreaders: Using High Attack Rate Events to Estimate N o for Airborne Transmission of COVID-19. Posted October 23, 2020. medRxiv. https://doi.org/10.1101/2020.10.21.20216895.
飛沫シミュレーションの概要
•飛沫シミレーションは、以下の3つのモデルにより構成される。



基本アルゴリズムの概要
•飛沫シミレーションを構成する3つのモデルと気流の運動を表す基礎方程式(ナビエ・ストークス方程式)を組み合わせることにより、ウイルス飛沫の飛散・拡散経路を可視化する。
