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第8波における新規陽性者および死者数のプロジェクション~大都市圏での第8波は変異株次第~
- 公開日
- 2022.11.15
- 研究者
- 平田晃正
- 機 関
- 名古屋工業大学 先端医用物理・情報工学研究センター
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名古屋工業大学 先端医用物理・情報工学研究センター
健安研におけるオミクロン株亜系統に対応した変異株PCR検査実施状況

BQ.1.1、BF.7疑いなどが増加傾向(BA.5疑いの割合が低下)
東京都防災ホームページ モニタリング会議(R4. 11.10より)
https://www.bousai.metro.tokyo.lg.jp/taisaku/saigai/1021348/1022447.html
文献1(文献2のとりまとめ)を参考に、本グループで概算:
● 中和抗体価がBA5に比べて、1/3から1/2。この値を用いて、感染予防効果を概算³
ー>接種時期によるものの、15%程度に相当(推定)
文献4(文献5のとりまとめ)を参考に、本グループで概算:
● 従来およびBA.5対応ワクチンによるBA.5の中和抗体価の差は2割程度⁴。
ー>BQ.1系統も同等と仮定した場合、感染予防効果に換算すると相違は数%³の可能性(推定)
1. P. Qu, “Distinct Neutralizing Antibody Escape of SARS-CoV-2 Omicron Subvariants
BQ.1, BQ.1.1, BA.4.6, BF.7 and BA.2.75.2,”
https://doi.org/10.1101/2022.10.19.512891 (preprint, bioRxiv)
2. 宮坂昌之先生facebook 2022年10月28日記事
https://www.facebook.com/Masayuki.miyasaka.9
3. D. S. Koury et al., Nat. Med., 2021
4. A. Collier et al., “Immunogenicity of the BA.5 Bivalent mRNA Vaccine Boosters,”
https://www.biorxiv.org/content/10.1101/2022.10.24.513619v1.abstract (preprint, bioRxiv)
5. 宮坂昌之先生facebook 2022年10月26日記事
https://www.facebook.com/masayuki.miyasaka.9
陽性率とDPCの関係に基づく概算
変異株に関する情報(感染力、免疫回避)の不足のため、正確な見積もりは困難
新規陽性者と陽性率には相関。
感染力が1.2倍とした場合、ピーク時の陽性率55%程度と推定。
ピークは40,000-45,000人(一週間平均。一日最大5-6万人。検査数の上限が存在する可能性)
但し、免疫回避を含めた複合的な感染性が20%増とした場合、また、これまでの免疫が一定有効であった場合、
それよりも低い可能性もありうる。
Q. 第7波で獲得した集団レベルでの免疫が、どの程度有効か?

年代別DPCと実効再生産数

現在の感染状況に対する考察
第7波におけるピーク値(7日間平均値)を1とした場合の東京・大阪・愛知・北海道・沖縄における新規陽性者数の比較

東京、大阪、愛知:10月下旬までは、ほぼ平行移動。以降上昇(大阪は現状でも想定範囲)。
可能性として、ハロウィンなど行動に伴う影響+変異株流入
北海道(および東北):10月中旬以降気温低下に伴う換気の影響の可能性、自然免疫獲得小(BA.5)
沖縄:気象条件の影響が軽微、自然免疫獲得大。
考慮していなかった(できなかった)要因:ハロウィン、学校行事(修学旅行、文化祭)、入国者数推移
プロジェクションにおける前提条件
● 入力パラメータとして、Mobility、Twitter、ワクチン感染予防効果、変異株ごとの感染力、過去の
新規陽性者数を用い、新規陽性者数、死者数を推定。
● 免疫回避の強い新規変異株が出現すると仮定。その回避を概算により設定(BQ.1、BQ.1.1、BF.7などを
一括して取り扱い) 。ワクチンの感染予防効果設定は2022年10月1日報告資料に準ずる。
● 従来および2価ワクチンによる感染予防効果の差は軽微と仮定(P3)。
人流および活動(Twitterで表現)については、昨年までの推移を参考に設定(回復傾向を反映)。(10/4報告資料参照)
● 10月までと同等にマスク着用がなされているなど、一定の感染対策が保持されると仮定。
● 検査体制は、第7波と同様。
● 限界:変異株情報の更新が限定的になったため、時間軸での粒度が荒い
前ページ実効再生産数拡大と行動

新規変異株への推移(仮定)
アドバイザリーボード鈴木先生の資料¹より
BQ.1のgrowth advantageの推定値が1.2(感染伝播性が現在の流行株よりも20%程度高い)
BQ.1の占める割合は、11月第1週時点で13%、12月第1週時点で79%と推定。
ただし現時点では信頼区間が広く、不確実性が高い。
ー> 現状での高精度な予測は困難

1.第105回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード (令和4年11月9日) P.75
https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/001010889.pdf
2.東京都モニタリング項目の分析(令和4年11月10日)
https://www.bousai.metro.tokyo.lg.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/022/447/20221110_05.pdf
今後の新規陽性者数の予測
新規変異株に関する知見の不確定性が大きいため、下記3つのシナリオを想定し、置き換わりのスピードを
P10におけるシナリオ1(感染研発表値と同等)と仮定した場合の今後の新規陽性者数を予測。
※ 人流・行動については現在と同等のレベルが続き、年末年始は昨年と同等と仮定。
1.新規変異株の感染力がBA.5系統と同等、かつBA.5系統感染によるハイブリッド効果が3割程度保たれた場合
2.新規変異株の感染力がBA.5系統と同等、かつBA.5系統感染によるハイブリッド効果が新規変異株には効果がない場合
3.新規変異株の感染力が実効再生産数ベースで1.2倍、かつBA.5系統感染によるハイブリッド効果が新規変異株には効果が
ない場合
※ 新規株に感染した際のハイブリッド効果は考慮している

今後の死者数推移の予測
前ページに対応する死者数の予測
※ 人流・行動については現在と同等のレベルが続き、年末年始は昨年と同等と仮定。
1.新規変異株の感染力がBA.5系統と同等、かつBA.5系統感染によるハイブリッド効果が3割程度保たれた場合
2.新規変異株の感染力がBA.5系統と同等、かつBA.5系統感染によるハイブリッド効果が新規変異株には効果がない場合
3.新規変異株の感染力が実効再生産数ベースで1.2倍、かつBA.5系統感染によるハイブリッド効果が新規変異株には効果が
ない場合
※ 新規株に感染した際のハイブリッド効果は考慮している

考察
● ワクチン:11月以降、どのタイミングで、どちらの種類(BA . 2対応、BA.5対応)を接種しても
感染拡大には大きな影響がない可能性
● 大都市圏における第8波の本格化は1週間程度先の可能性(変異株情報による限界)
● 規模:これまで獲得した免疫と新規変異株の免疫回避の度合いに依存。
東京・現状での推定値は第7波と同程度。都道府県の免疫状態により、ばらつきあり。
● 免疫回避が報告よりも大きい場合には一日あたり5-6万人程度に達する可能性(陽性者数であり、
無症状感染者数は8倍と仮定した場合)
● 第7波(BA.5)の感染により獲得した免疫が新規変異株にある程度(例示は3割)有効であれば、
第7波の規模を下回る。
● 北海道(東北地方など):換気の問題で増加した可能性。今後、全国的に同様の傾向が予想される。
● 東京、愛知など:ワクチンの感染予防効果が低下した中での、ハロウィンなど行動による影響。
変異株の影響はゼロではないものの、今後より大きくなる可能性あり。
参考(11/11時点)
● ハロウィンの数日後に発熱相談が増加
● 一時的に、実効再生産数が増加した可能性が高い
● 現在、大きな下げ要因はない(Twitter数は減少)。
● 現在の変異株データでは、BA.5とBQ.1との切り分けをするには十分ではなく、
BQ.1の急増が生ずるかは注視する必要あり。


中和抗体価がBA5に比べて、1/3から1/2。この値を用いて、感染予防効果を概算³
接種時期によるものの、15%程度に相当
1. 宮坂昌之先生facebook 2022年10月28日記事 https://www.facebook.com/masayuki.miyasaka.9
2. P. Qu, “Distinct Neutralizing Antibody Escape of SARS-CoV-2 Omicron Subvariants
BQ.1, BQ.1.1, BA.4.6, BF.7 and BA.2.75.2,” https://doi.org/10.1101/2022.10.19.512891 (preprint, bioRxiv)
3. D. S. Koury et al., Nat. Med., 2021

従来およびBA.5対応ワクチンによるBA.5の中和抗体価の差は2割程度。
BQ.1系統も同等と仮定した場合、感染予防効果に換算すると相違は数%の可能性³。
1. 宮坂昌之先生facebook 2022年10月26日記事(上記の画像)
https://www.facebook.com/masayuki.miyasaka.9
2. A. Collier et al., “Immunogenicity of the BA.5 Bivalent mRNA Vaccine Boosters,”
https://www.biorxiv.org/content/10.1101/2022.10.24.513619v1.abstract(preprint, bioRxiv)
3. D. S. Koury et al., “Neutralizing antibody levels are highly predictive of immune protection
from symptomatic SARS-CoV-2 infection,” Nat. Med., 2021