サマリー
1.7/12緊急事態宣言の効果をシナリオ推定
7/12以降の東京都の緊急事態宣言効果を、第2次宣言相当(2021/1) 、第3次宣言相当(2021/4)、 第3次宣言相当+ワクチン接種加速の3つのシナリオで、新規陽性患者数と重症者数(東京都基準※)を推定した。
※ 東京都基準の重症者・・・・人工呼吸管理またはECMOを使用している患者(東京都は4/27より本基準で運用している。)
2.第2次緊急事態宣言相当では、2100人を超える新規陽性患者が発生
2021年1月の第2次緊急事態宣言と同程度の効果の場合、8月上旬に新規陽性患者は1日あたり2100人を超え、 9月上旬には210人の重症者が発生する恐れがある。現在の人出からは、こちらに近い状況と思われる。
3.第3次緊急事態宣言相当では、1200人程度の新規陽性患者が発生
2021年4月の第3次緊急事態宣言と同程度の効果の場合、8月上旬に新規陽性患者は1日あたり1230人に達し、その後減少するが、8月中旬には147人の重症者が発生する恐れがある。2022年4月まで感染は続く可能性がある。
4.ワクチン接種加速および39歳以下への接種強化により、秋以降の感染抑制が可能
8月15日以降のワクチン接種速度1.2%/日に加速し、15-39歳の接種順位を上げる (15-39歳 0.7, 40-64歳 0.3)ことで、秋以降の感染抑制効果が高くなり、2022年3月で終息する可能性がある。
デルタ株を含む新規陽性患者のシナリオ分析
➡︎7/12緊急事態宣言の強度が第3次相当であれば、8月上旬に陽性患者数1230人、重症者数147人
➡︎ワクチン接種加速および39歳以下への接種強化により、秋以降の感染抑制・来年3月の終息が可能
7/12に緊急事態宣言およびワクチン接種加速効果(ベース 1.0%/日)
1.第2次宣言相当の効果 ワクチン接種速度 1.0%/日 年齢別優先比率:15-39歳0.5, 40-59歳0.5
2.第3次宣言相当の効果 ワクチン接種速度 1.0%/日 年齢別優先比率:15-39歳0.5, 40-59歳0.5
3.第3次宣言相当の効果 ワクチン接種速度 8/15以降 1.2%/日 年齢別優先比率: 15-39歳0.7, 40-59歳0.3
赤:新規陽性者総数(15歳以上)
緑:新規陽性者数(15歳〜39歳)
青:新規陽性者数(40歳〜64歳)
紫:新規陽性者数(65歳〜)
濃紫波線:重症者数
実線:実測数
波線:推定数
*数値は7 日間移動平均
モデル設定
1.SEIR数理モデルとAI最適化手法による感染モデル
人口流動を考慮したSEIRモデルとAI技術(進化的最適化+準ニュートン法)を用いて感染モデル推定の最適化を行うことで、2.6人/日の精度で15歳〜39歳、40歳〜59歳、 65歳以上の3つの年代内および年代間での感染推定を行った*。都外からの陽性患者流入推定値をモデルに組み込み、過去3ヶ月の陽性患者数からモデルを学習させた。重症者数は、 2021年6月21日〜7月15日のデータから統計モデルを構築し、それぞれの年代の陽性患者数推移から推定した。また,昨年の第1次緊急事態宣言解除と同等の都民の行動変容があったとして、昨年夏以降の実効再生産数と都内流動人口データを適用してシミュレーションを実施した。
2. サーキットブレーカーの強度とワクチン接種効果を推定
アルファ株(従来株残存)とデルタ株を対象に、緊急事態宣言緩和の強度を第1次と第2次の緊急事態宣言の中間に設定した。
3.ワクチン効果設定
• デルタ株は,アルファ株に対して実効再生産数を50%アップさせるとした。
ワクチン効果は,アルファ株に対して、第1回で57%,第2回で94%の発症予防効果があるとし、デルタ株に対してはそれぞれ0.9倍とした。 3/1 – 6/22 の実効再生産数・人口流動数の推移は実測値を使用。6/23〜7/22は、直近の7日間移動平均Rtを使用し、7/23以降は2020/7/23以降と同等と仮定。ピーク後の減少は,感染拡大に伴う外出自粛などの住民の行動変容に起因するとした。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210610/k10013077751000.html
https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000787862.pdf
• ワクチン接種速度の設定
3/5以降人口の0.05%(医療従事者1回目実測数)
3/27日後 0.032%, 0.033%(医療従事者1回目, 2回目実測数)
4/12以降 0.069%, 0.030%(医療従事者1回目, 2回目実測数)0.01% (高齢者1回目実測数)
5/4以降 0.064%, 0.078%(医療従事者1回目, 2回目実測数) 0.065%, 0.006%(高齢者1回目, 2回目実測数)
6/1以降 0.064%, 0.078%(医療従事者1回目, 2回目見込み) 0.08%, 0.065% (高齢者1回目, 2回目見込み)
6/21以降 k/2%, k/2%(医療従事者1回目, 2回目見込み) k/2%, k/2% (高齢者1回目, 2回目見込み)k=1.0%
8/15以降1.0倍 or 1.2倍
*新規陽性患者は、15歳以上の新規陽性者数(公表日)としているため、陽性患者総数よりも1割程度低めになっている。
モデル詳細
年代別ワクチン効果SEIRモデル
年代別感染推移確率(右から左へ伝播)
Yは15歳以上39歳以下、Mは40歳以上64歳以下、Eは65歳以上を表す。 15歳以上39歳以下への感染は、同年代(15歳以上39歳以下)からが97%、 40歳以上64歳以下からが3%、65歳以上からが0%であることを示す。 40歳以上64歳以下と65歳以上への感染についても同様。
逆シミュレーションモデル