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人流抑制・接種証明効果の推定 東京モデル
- 公開日
- 2021.08.31
- 研究者
- 倉橋節也
- 機 関
- 筑波大学大学院人文社会ビジネス科学学術院ビジネス科学研究群
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筑波大学大学院人文社会ビジネス科学学術院ビジネス科学研究群
サマリー
1.19時の繁華街人流が8月末水準を維持できれば、9月以降陽性者数は減少する
都内繁華街の時間帯別滞留人口および都外からの流入人口で実効再生産数を統計的推定をした結果、19時の繁華街滞留人口が強い関係を持っていることが示され、8月末の水準を維持できれば、9月以降も陽性者数が減少することが推定される。
2.19時の繁華街人流が5月〜6月水準まで戻ると、12月以降に重症者数が急増する
19時の繁華街滞留人口が25%〜43%増加すると、陽性者数は下げ止まり重症者数は来年2月に最大600人まで増加する可能性がある。その要因は、デルタ株に対する経時的なワクチン効果(第2回接種の180日後に64%まで感染抑制効果と免疫効果が減少*)の減衰にある。
* イスラエル保健省 https://www.gov.il/en/departments/news/05072021-03
https://www.gov.il/en/departments/news/06072021-04
3.ブースター接種は中長期的に有効
接種後180日を超えた人へのブースター接種によって、新規陽性者数、重症者数を抑制することができるが、人流増加に対しては、短期的には限定的。
4.ワクチン接種証明の活用は短期的にも有効
職場・飲食店・イベント会場へのワクチン接種証明による入場制限は、短期的にも中長期的にも効果が高く、80%の実施で感染抑制効果が期待できる。
人流が現状維持の場合の陽性者数・重症者数の推定
➡︎19時の繁華街人流が8月末水準を維持できれば、9月以降陽性者数は減少する。
➡︎9/1以降の19時滞留人口は8/29相当を維持*、10/1以降の19時滞留人口は昨年並みとした。
➡︎180日後ワクチン感染予防効果70%、260日以降50%
➡︎重症者数は、東京都基準**で実数から統計モデルで推定
*都内繁華街(新宿・銀座・渋谷・上野・池袋・六本木)の19時時点の滞留人口から推定
**東京都基準の重症者:人工呼吸管理またはECMOを使用している患者(東京都は4/27より本基準で運用)


赤:新規陽性患者数(0歳以上)
緑:新規陽性患者数(0歳〜39歳)
青:新規陽性患者数(40歳〜59歳)
紫:新規陽性患者数(60歳〜)
実線:実測数 波線:推定数
*数値は7 日間移動平均
人流が25%増加した場合の陽性者数・重症者数の推定
➡︎19時の繁華街人流が昨年の1.25倍に増加した場合、12月以降に重症者数が急増する。
➡︎9/1以降の19時滞留人口は8/29相当を維持、10/1以降の19時滞留人口は昨年の1.25倍
➡︎180日後ワクチン感染予防効果70%、260日以降50%
➡︎重症者数は、東京都基準で実数から統計モデルで推定


図:19時滞留人口と感染変化率

赤:新規陽性患者数(0歳以上)
緑:新規陽性患者数(0歳〜39歳)
青:新規陽性患者数(40歳〜59歳)
紫:新規陽性患者数(60歳〜)
実線:実測数 波線:推定数
*数値は7 日間移動平均
人流が43%増加した場合の陽性者数・重症者数の推定
➡︎19時の繁華街人流が昨年の1.43倍に増加した場合、12月以降に重症者数が急増する。
➡︎99/1以降の19時滞留人口は8/29相当を維持、10/1以降の19時滞留人口は昨年の1.43倍
180日後ワクチン感染予防効果70%、260日以降50%
重症者数は、東京都基準で実数から統計モデルで推定


赤:新規陽性患者数(0歳以上)
緑:新規陽性患者数(0歳〜39歳)
青:新規陽性患者数(40歳〜59歳)
紫:新規陽性患者数(60歳〜)
実線:実測数 波線:推定数
*数値は7 日間移動平均
人流が25%増加した場合のブースター接種による抑制効果推定
➡︎ブースター接種は高齢者の感染・重症化を防ぎ、中長期的に効果的である。
➡︎9/1以降の19時滞留人口は8/29相当を維持、10/1以降の19時滞留人口は昨年の1.25倍
➡︎ブースター接種でワクチン感染予防効果85%〜76%
➡︎重症者数は、東京都基準で実数から統計モデルで推定


赤:新規陽性患者数(0歳以上)
緑:新規陽性患者数(0歳〜39歳)
青:新規陽性患者数(40歳〜59歳)
紫:新規陽性患者数(60歳〜)
実線:実測数 波線:推定数
*数値は7 日間移動平均
人流が43%増加した場合のブースター接種による抑制効果推定
➡︎ブースター接種は高齢者の感染・重症化を防ぎ、中長期的に効果的である。
➡︎9/1以降の19時滞留人口は8/29相当を維持、10/1以降の19時滞留人口は昨年の1.25倍
➡︎ブースター接種でワクチン感染予防効果85%〜76%
➡︎重症者数は、東京都基準で実数から統計モデルで推定


赤:新規陽性患者数(0歳以上)
緑:新規陽性患者数(0歳〜39歳)
青:新規陽性患者数(40歳〜59歳)
紫:新規陽性患者数(60歳〜)
実線:実測数 波線:推定数
*数値は7 日間移動平均
人流が43%増加した場合のワクチン接種証明による抑制効果推定
➡︎ワクチン接種証明により、陽性者数・重症者数が減少する可能性が示唆された。
➡︎9/1以降の19時滞留人口は8/29相当を維持、10/1以降の19時滞留人口は昨年の1.43倍
➡︎職場、飲食店、イベントの80%がワクチン接種証明で入場制限
➡︎180日後ワクチン感染予防効果 70%、260日以降50%
➡︎ブースター接種は行わない
➡︎重症者数は、東京都基準で実数から統計モデルで推定



東京近郊エージェントモデル(友達ネットワーク推定)
ワクチン接種証明による実効再生産数低減効果
をシミュレーションで推定し、SEIRに設定
赤:新規陽性患者数(0歳以上)
緑:新規陽性患者数(0歳〜39歳)
青:新規陽性患者数(40歳〜59歳)
紫:新規陽性患者数(60歳〜)
実線:実測数 波線:推定数
*数値は7 日間移動平均
モデル設定
1.SEIR数理モデルとAI最適化手法による感染モデル
人口流動を考慮したSEIRモデルとAI技術(進化的最適化+準ニュートン法)を用いて感染モデル推定の最適化を行うことで、0歳〜39歳、40歳〜59歳、 60歳以上の3つの年代内および年代間での感染推定を行った。県外からの陽性患者流入者数をモバイル空間統計データおよびLocationMind xPop*1から推定してモデルに組み込み、2021年3月1日〜8月29日のデータからモデルを学習させた。
2.人流効果とワクチン接種効果を推定
3/1〜8/29の都内繁華街滞留人口、都外からの流入人口、都外からの感染者流入推定数を利用し、非線形回帰モデルで感染率変化を推定した。その結果から、人流効果の強度をSEIRに設定し、10/1以降の人流増加効果を推定した。
3.ワクチン効果と行動変容効果
・ワクチン効果は,アルファ株に対して、第1回で57%,第2回で94%の発症予防効果があるとし、デルタ株に対してはそれぞれ0.9倍とした。3/1 – 8/29 の実効再生産数・人口流動数の推移は実測値を使用。8/31以降は、直近の7日間移動平均感染変化率、10/1以降は直近3日間データと昨年の感染変化率、人流数の移動平均を使用した。
・ワクチン接種速度の設定3/5以降人口の0.05%(医療従事者1回目実測数)3/27日後 0.032%, 0.033%(医療従事者1回目, 2回目実測数)4/12以降 0.069%, 0.030%(医療従事者1回目, 2回目実測数)0.01% (高齢者1回目実測数)5/4以降 0.064%, 0.078%(医療従事者1回目, 2回目実測数) 0.065%, 0.006%(高齢者1回目, 2回目実測数)6/1以降 0.064%, 0.078%(医療従事者1回目, 2回目見込み) 0.08%, 0.065% (高齢者1回目, 2回目見込み)6/21以降 k/2%, k/2%(医療従事者1回目, 2回目見込み) k/2%, k/2% (高齢者1回目, 2回目見込み)k=0.9% 8/15以降1.3%
・ワクチン減衰効果2回目ワクチン接種後180日で感染抑制効果が64%(イスラエル保健省)まで減衰するとした。免疫効果については、東京都の重症者実数から統計モデル(時系列回帰モデル)で年代別に推定した。
・https://www.gov.il/en/departments/news/05072021-03
・https://www.gov.il/en/departments/news/06072021-04
4.東京近郊モデル
個体ベースモデルで東京近郊都市の世帯・職場・学校・通勤電車・病院・ショッピングモール・飲食店・イベント会場を再現した。
人口は1350名で、単身、二人、親子3人/4人、3世代の世帯を若年・成年・高齢者で住民基本台帳集計データに従って再構成した。
住民は最大20名の友達ネットワークを持ち、設定により任意の相手と対面接触することとした。
*1 「LocationMind xPop」データは、NTTドコモが提供するアプリケーション(※)の利用者より、許諾を得た上で送信される携帯電話の位置情報を、NTTドコモが総体的かつ統計的に加工を行ったデータ。位置情報は最短5分毎に測位されるGPSデータ(緯度経度情報)であり、個人を特定する情報は含まれない。※ドコモ地図ナビサービス(地図アプリ・ご当地ガイド)等の一部のアプリ
モデル詳細
年代別ワクチン効果SEIRモデル


年代別感染推移確率(右から左へ伝播)

Yは0歳以上39歳以下、Mは40歳以上59歳以下、Eは60歳以上を表す。
15歳以上39歳以下への感染は、同年代(15歳以上39歳以下)からが82%、40歳以上64歳以下からが18%、65歳以上からが0%であることを示す。
40歳以上64歳以下と65歳以上への感染についても同様。
逆シミュレーションモデル
