サマリー
1.7/12緊急事態宣言の効果をシナリオ推定
7/12以降の東京都の第4次緊急事態宣言効果、第2次宣言(2021/1)相当の効果 の2つのシナリオで、新規陽性患者数と重症入院患者数(東京基準)を推定した。
2.現在の第4次緊急事態宣言相当では、15,000人を超える新規陽性患者が発生
2021年7月の第4次緊急事態宣言の効果は少なく、9月初旬の新規陽性患者は1日あたり15,000人(週平均)を超え、重症入院患者数も最大で1,200人前後となる恐れがある。
3.第2次緊急事態宣言相当まで抑制できても、10,000人を超える新規陽性患者が発生
2021年1月の第2次緊急事態宣言と同程度まで抑制できたとしても、9月上旬に新規陽性患者は1日あたり10,00名(週平均)を超え、最大で760名程度の重症入院患者が発生する恐れがある。
4.抑制シナリオ案:8/9〜8/22まで臨時一斉休業実施で、陽性者7,000人まで抑制可能
非常事態の医療危機が目前であり、 飲食店の時短やアルコール提供休止要請に加えて、行動変容を促すために、 2週間の臨時夏季休業、企業のテレワーク率70%以上、長距離移動(10kmなど)の自粛、4人以上の外出自粛など、都民全体で痛みを分かち合う行動により、 新規陽性患者数を7,000人、重症入院患者数を540人まで抑制可能。
デルタ株による新規陽性患者数のシナリオ分析
➡︎第4次緊急事態宣言の効果は少なく、9月初旬に陽性患者数 14,000人(15,400人*)の可能性
➡︎8/9〜8/22まで臨時一斉休業を実施し、1次2次宣言中間相当に抑制することで、 6,500人(7,100人*)の可能性
7/12に緊急事態宣言およびワクチン接種加速効果(ベース 1.0%/日)15歳〜59歳以下は同時並行接種
1.現在の第4次宣言相当効果を継続
2.1月の第2次宣言相当まで抑制
3.夏季臨時休業の効果(8/9〜8/22まで臨時一斉休業し、1次と2次の中間並に感染抑制)
*いずれも15歳以上の陽性患者数であり、14歳以下を加えると約1.1倍になる
赤:新規陽性患者数(15歳以上)
緑:新規陽性患者数(15歳〜39歳)
青:新規陽性患者数(40歳〜64歳)
紫:新規陽性患者数(65歳〜)
実線:実測数
波線:推定数
*数値は15歳以上7 日間移動平均
デルタ株による重症入院患者数のシナリオ分析
➡︎第4次緊急事態宣言の効果は少なく、9月初旬に重症入院患者数 1,180人の可能性
➡︎8/9〜8/22まで臨時一斉休業を実施し、1次2次宣言中間相当に抑制することで、 540人の可能性
7/12に緊急事態宣言およびワクチン接種加速効果(ベース 1.0%/日)15歳〜59歳以下は同時並行接種
1.現在の第4次宣言相当効果を継続
2.1月の第2次宣言相当まで抑制
3.夏季臨時休業の効果(8/9〜8/22まで臨時一斉休業し、1次と2次の中間並に感染抑制)
赤:重症入院者数(15歳以上)
緑:重症入院者数(15歳〜39歳)
青:重症入院者数(40歳〜64歳)
紫:重症入院者数(65歳〜)
実線:実測数
波線:推定数
*数値は以上7日間移動平均
モデル設定
1.SEIR数理モデルとAI最適化手法による感染モデル
人口流動を考慮したSEIRモデルとAI技術(進化的最適化+準ニュートン法)を用いて感染モデル推定の最適化を行うことで、15歳〜39歳、40歳〜59歳、 65歳以上の3つの年代内および年代間での感染推定を行った*。都外からの陽性患者流入者数をモバイル空間統計データから推定してモデルに組み込み、過去3ヶ月のデータからモデルを学習させた。重症者数は、 2021年6月21日〜8月1日の東京都のデータから統計モデルを構築し、年代別陽性患者数推移から推定した。また,昨年の第1次緊急事態宣言解除後と同等の都民の行動変容があったとして、昨年夏以降の実効再生産数と都内流動人口データを適用してシミュレーションを実施した。デルタ株は、6/1に10名の感染者がいると仮定し、推定したアルファ株の1.5倍の感染力(基本再生算数)を持つとした。
2.サーキットブレーカーの強度とワクチン接種効果を推定
アルファ株(従来株残存)とデルタ株を対象に、緊急事態宣言緩和の強度を設定した。
3.ワクチン効果と行動変容効果
•ワクチン効果は,アルファ株に対して、第1回で57%,第2回で94%の発症予防効果があるとし、デルタ株に対してはそれぞれ0.9倍とした。3/1 – 8/1 の実効再生産数・人口流動数の推移は実測値を使用。8/2以降は、直近の7日間移動平均Rtと2020年同日のRtの平均を使用し、8/30以降はは3日間移動平均と2020年同日のRtの平均と同等と仮定することで、感染拡大に伴う外出自粛などの住民の行動変容に起因するとした。
•ワクチン接種速度の設定
3/5以降人口の0.05%(医療従事者1回目実測数)
3/27日後 0.032%, 0.033%(医療従事者1回目, 2回目実測数)
4/12以降 0.069%, 0.030%(医療従事者1回目, 2回目実測数)0.01% (高齢者1回目実測数)
5/4以降 0.064%, 0.098%(医療従事者1回目, 2回目実測数) 0.065%, 0.006%(高齢者1回目, 2回目実測数)
6/1以降 0.064%, 0.098%(医療従事者1回目, 2回目見込み) 0.08%, 0.065% (高齢者1回目, 2回目見込み)
6/21以降 k/2%, k/2%(医療従事者1回目, 2回目見込み) k/2%, k/2% (高齢者1回目, 2回目見込み)k=1.0%
8/15以降1.0倍
*新規陽性患者は、15歳以上の新規陽性者数(公表日)としているため、陽性患者総数よりも1割程度低めになっている。
モデル詳細
年代別ワクチン効果SEIRモデル
年代別感染推移確率(右から左へ伝播)
Yは15歳以上39歳以下、Mは40歳以上64歳以下、Eは65歳以上を表す。
15歳以上39歳以下への感染は、同年代(15歳以上39歳以下)からが97%、40歳以上64歳以下からが3%、65歳以上からが0%であることを示す。
40歳以上64歳以下と65歳以上への感染についても同様。
逆シミュレーションモデル