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宣言解除日・人流増加・ワクチン効果・ブースター接種・接種率・接種証明制限 効果の推定(東京都)
- 公開日
- 2021.09.14
- 研究者
- 倉橋節也
- 機 関
- 筑波大学大学院人文社会ビジネス科学学術院ビジネス科学研究群
/
-
筑波大学大学院ビジネス科学研究科
サマリー
・緊急事態宣言解除日・人流増加・ワクチン効果・ブースター接種の有無・接種率・接種証明制限のそれぞれの設定値に対して、新規陽性者数、重症者数の推定を実施した。
・ワクチンの感染抑制効果減衰を仮定すると、ブースター接種とワクチン接種証明による職場・飲食店・イベントへの入場制限の組み合わせが最も効果があることが示唆された。
シミュレーション設定
➡︎緊急事態宣言解除日・人流増加・ワクチン効果・ブースター接種の有無・接種率・接種証明制限のそれぞれの設定値の組み合わせ19通り(詳細次ページ)に対して、新規陽性者数、重症者数の推定を実施した。

緊急事態宣言解除日
10月1日か10月15日の2通り。緊急事態宣言の解除日以降、繁華街の19時滞留人口が25%増加する。
ワクチン効果
ワクチン接種によりどの程度の感染予防効果が得られるか。L,M,Hの3通り。
・L(Low):1回目55%、2回目65%
・M(Medium):1回目65%、2回目75%
・H(High):1回目70%、2回目95%
ワクチン減衰率
接種後のワクチン効果の減衰率。以下の3通り。
・減衰なし
・30%減衰:2回目接種から180日後にワクチン効果30%減少、240日後に50%減少。
・10%(BS):ブースター接種(3回目接種)により、ワクチン減衰が2回目接種の240日後も10%に留まる。
※ブースター接種は、3回目の接種により減衰したワクチン効果が再度上昇するのではなく、240日間効果がほぼ減衰しないことで表現する。
ワクチン接種率
年代別のワクチン接種率。以下の3通り。
・72%: 39歳以下60%、40-59歳72%、60歳以上90%
・80%: 39歳以下70%、40-59歳85%、60歳以上90%
・85%:39歳以下80%、40-59歳85%、60歳以上93%
ワクチン接種証明制限による制限率
ワクチン接種証明もしくはPCR/抗原検査の陰性証明がない人の施設等への入場/利用制限率。
以下の3通り。
・制限なし(ワクチン接種証明制限を導入しない)
・50%: 証明がない方の施設利用率が50%。
・70%: 証明がない方の施設利用率が30%。
シミュレーション結果サマリー


前提条件(シミュレーション設定スライドも参考のこと):
*1 緊急事態宣言解除日 解除後繁華街19時滞留人口25%増加
*2 ワクチン接種1回目効果,2回目効果:L(55%.65%), M(65%,75%), H(70%,95%)
*3 ワクチン2回目接種180日後減衰率,240日後減衰率:0%(0%,0%), 30%(30%,50%), 10%(BS)(10%,10%)
*4 ワクチン接種率 全人口(39歳以下,40-59歳,60歳以上):72%(60%,72%,90%), 80%(70%,85%, 90%), 85%(80%,85%,93%)
*5 ワクチン接種証明 or PCR/抗原検査陰性証明がない人の入場/利用制限率
※以後、特に記載がない限り日付は2022年を示す。
※全ての設定値の組み合わせを検討すると膨大な数になるため、主な19通りについて実施。
参考:条件からシナリオNoの逆引き

1. 陽性者数比較
1.ワクチン効果の影響(ワクチン減衰なし) シナリオ1,2,3
2.ワクチン接種率の影響(ワクチン減衰なし) シナリオ2,4,5
3.緊急事態宣言10月15日解除の場合(ワクチン減衰なし) シナリオ6,7
4.ワクチン効果の影響(ワクチン減衰あり) シナリオ8,9,10
5.ワクチン接種率の影響(ワクチン減衰あり) シナリオ9,11,12
6.緊急事態宣言10月15日解除の場合(ワクチン減衰あり) シナリオ13,14
7.接種証明制限の導入 シナリオ11,16,17
8.ブースター接種の導入 シナリオ15,18,19
1-1. 陽性者数の推定:ワクチン効果の影響(ワクチン減衰なし) 1,2,3
➡ワクチンの減衰を考慮しない場合、ワクチン効果の高低による感染抑制効果の違いは見られない。




1-2. 陽性者数の推定:ワクチン接種率の影響(ワクチン減衰なし) 2,4,5
➡ワクチンの減衰を考慮しない場合、ワクチン接種率の上昇に伴い2022年以降の感染拡大を抑制できる。




1-3. 陽性者数の推定:緊急事態宣言10月15日解除の場合(ワクチン減衰なし)6,7
➡緊急事態宣言を10月15日まで延長すれば、10月1日解除の場合より2022年の感染拡大を抑制できる。




1-4. 陽性者数の推定:ワクチン効果の影響(ワクチン減衰あり) 8,9,10
➡ワクチンの減衰を考慮しても、ワクチン効果の高低による感染抑制効果の違いは見られない。




1-5.陽性者数の推定:ワクチン接種率の影響(ワクチン減衰あり) 9,11,12
➡ワクチンの減衰を考慮しても、ワクチン接種率の上昇に伴い2022年以降の感染拡大を抑制できる。




1-6.陽性者数の推定:緊急事態宣言10月15日解除の場合(ワクチン減衰あり)13,14
➡緊急事態宣言を10月15日まで延長すれば、10月1日解除の場合より2022年の感染拡大を抑制できる。




1-7.陽性者数の推定:接種証明制限の導入 11,16,17
➡接種証明制限の導入により、2022年の感染拡大を抑制できる可能性が示唆された。
➡しかしながら、接種証明による制限率70%でもピーク時1,000人を超え完全には抑制できない。




1-8.陽性者数の推定:ブースター接種の導入 15,18,19
➡ブースター接種と接種証明制限との組み合わせにより、最も効果的に2022年の感染拡大を抑制できる。




2. 重症者数比較
1.ワクチン効果の影響(ワクチン減衰なし) シナリオ1,2,3
2.ワクチン接種率の影響(ワクチン減衰なし) シナリオ2,4,5
3.緊急事態宣言10月15日解除の場合(ワクチン減衰なし) シナリオ6,7
4.ワクチン効果の影響(ワクチン減衰あり) シナリオ8,9,10
5.ワクチン接種率の影響(ワクチン減衰あり) シナリオ9,11,12
6.緊急事態宣言10月15日解除の場合(ワクチン減衰あり) シナリオ13,14
7.接種証明制限の導入 シナリオ11,16,17
8.ブースター接種の導入 シナリオ15,18,19
2-1. 重症者数の推定:ワクチン効果の影響(ワクチン減衰なし) 1,2,3
➡ワクチンの減衰を考慮しない場合、ワクチン効果の高低による重症者数抑制効果の違いは見られない。




2-2.重症者数の推定:ワクチン接種率の影響(ワクチン減衰なし) 2,4,5
➡ワクチンの減衰を考慮しない場合、ワクチン接種率の上昇に伴い2022年以降の重症者増加を抑制できる。




2-3.重症者数の推定:緊急事態宣言10月15日解除の場合(ワクチン減衰なし) 6,7
➡緊急事態宣言を10月15日まで延長すれば、10月1日解除の場合より2022年の重症者増加を抑制できる。




2-4.重症者数の推定:ワクチン効果の影響(ワクチン減衰あり) 8,9,10
➡ワクチンの減衰を考慮しても、ワクチン効果の高低による重症者数抑制効果の違いは見られない。




2-5.重症者数の推定:ワクチン接種率の影響(ワクチン減衰あり) 9,11,12
➡ワクチンの減衰を考慮しても、ワクチン接種率の上昇に伴い2022年以降の重症者増加を抑制できる。




2-6.重症者数の推定:緊急事態宣言10月15日解除の場合(ワクチン減衰あり)13,14
➡緊急事態宣言を10月15日まで延長すれば、10月1日解除の場合より2022年の重症者増加を抑制できる。




2-7.重症者数の推定:接種証明制限の導入11,16,17
➡接種証明制限の導入により、2022年の重症者増加を抑制できる可能性が示唆された。
➡しかしながら、接種証明による制限率70%でも完全には抑制できない。




2-8.重症者数の推定:ブースター接種の導入 15,18,19
➡ブースター接種と接種証明制限との組み合わせにより、最も効果的に2022年の重症者増加を抑制できる。




モデル設定
1.SEIR数理モデルとAI最適化手法による感染モデル
人口流動を考慮したSEIRモデルとAI技術(進化的最適化+準ニュートン法)を用いて感染モデル推定の最適化を行うことで、0歳〜39歳、40歳〜59歳、 60歳以上の3つの年代内および年代間での感染推定を行った。県外からの陽性患者流入者数をモバイル空間統計データ(NTTドコモ)およびLocationMind xPop*1から推定してモデルに組み込み、2021年3月1日〜9月12日のデータからモデルを学習させた。
2.サーキットブレーカーの強度とワクチン接種効果を推定
デルタ株を対象に、人流の増加率を設定した。9/20以降に人流抑制が緩和するとした。
3.ワクチン効果と行動変容効果
・ワクチン効果は,アルファ株に対して、第1回で57%,第2回で94%の発症予防効果があるとし、デルタ株に対してはそれぞれ0.9倍とした。
3/1 – 9/12 の実効再生産数・人口流動数の推移は実測値を使用。9/13以降は、直近の7日間移動平均、10/1以降は直近2日と昨年の感染変化率の平均を使用した。
・ワクチン接種速度の設定3/5以降人口の0.05%(医療従事者1回目実測数)
3/27日後 0.032%, 0.033%(医療従事者1回目, 2回目実測数)
4/12以降 0.069%, 0.030%(医療従事者1回目, 2回目実測数)0.01% (高齢者1回目実測数)
5/4以降 0.064%, 0.078%(医療従事者1回目, 2回目実測数) 0.065%, 0.006%(高齢者1回目, 2回目実測数)
6/1以降 0.064%, 0.078%(医療従事者1回目, 2回目見込み) 0.08%, 0.065% (高齢者1回目, 2回目見込み)
6/21以降 k/2%, k/2%(医療従事者1回目, 2回目見込み) k/2%, k/2% (高齢者1回目, 2回目見込み)k=0.9%
8/15以降1.3%
・ワクチン減衰効果
2回目ワクチン接種後180日で感染抑制効果が64%(イスラエル保健省),90日で78%(Oxford, Nature),90日で65.5%(NEJM)まで減衰するとした報告を参照に,120日で15%,180日で30%,240日で45%減衰(下限50%)するとした。免疫効果(重症化率)については東京都の重症者数から統計モデルで推定した。
・■https://www.gov.il/en/departments/news/05072021-03, ■https://www.gov.il/en/departments/news/06072021-04
・Resurgence of SARS-CoV-2 Infection in a Highly Vaccinated Health System Workforce, DOI: 10.1056/NEJMc2112981, The new England journal of medicine
・COVID vaccines protect against Delta, but their effectiveness wanes, doi: ■https://doi.org/10.1038/d41586-021-02261-8, Nature
*1 「LocationMind xPop」データは、NTTドコモが提供するアプリケーション(※)の利用者より、許諾を得た上で送信される携帯電話の位置情報を、NTTドコモが総体的かつ統計的に加工を行ったデータ。位置情報は最短5分毎に測位されるGPSデータ(緯度経度情報)であり、個人を特定する情報は含まれない。※ドコモ地図ナビサービス(地図アプリ・ご当地ガイド)等の一部のアプリ
モデル詳細



東京近郊市街地個体ベースモデル
東京郊外の世帯構成を基にしているため名称は”東京”となっているが、抽象的なモデルであるため他の都市にも応用可能。
・東京郊外の世帯構成に基づいて2つの街で構成された1348人のエージェントで表現したモデルを構築
・ワクチン接種証明による職場、飲食店、イベント会場への入場制限を20%〜100%各500回試行からRt変化率を測定(飲食は友達ネットワークを制限)
・感染者数20人/10万人(≒3000人/東京)



東京都流動人口による感染変化率推定モデル

