1.シミュレーションの対象と期間
東京都および大阪府:新規陽性者数、重症者数、死亡者数の変化。
期間:2022 年3 ⽉末まで
3.流行するウィルス:デルタ株のみ
現状での我が国における「(過去の)人流に対する実効再生産数」を学習しているため、個別の基本再生産数の設定は不要
4.ワクチンの効果と接種率
効果:上位ケース、中位ケース、下位ケースとした場合に、ワクチンの有効性を海外都市のデータに基づき補正し、利用。
接種率:現在の内閣官房資料に基づくものを基本とし、それ以外の場合にも拡張(但し、年齢構成については考慮していない)
5.気象条件
昨年の気象条件を仮定
予測モデル
1.変異株の影響を考慮して、日本の状況から新規感染者数を予測(ワクチン接種率の定義なし)
2.ワクチンの影響をより詳細に考慮するため、他国のデータを学習し、補正
Model (1):ワクチンの影響は明示的に定義しない
・ネットワークの構築は以前のものと同様:
https://www.mdpi.com/1660-4601/18/15/7799
・入力値は、気象情報(最低/最高気温・平均湿度)、人流データ、平日/休日、緊急事態宣言の有無、現在までの新規感染者数に加えて、変異株のラベル(0: standard, 1: alpha, 2: delta)
・学習データは2020年8月1日~2021年8月29日(2020年1月~7月の感染者数が少ない初期を除外)
・気象情報、人流データの将来値は、昨年と同様と仮定
・学習データの対象都市は、東京・大阪・愛知
・2か月先まで予測(2021年10月31日まで)
予測モデル
Model (2)
・純粋なワクチンの影響のみを考慮できるよう、予測モデルを分離している
・ネットワークの入力値は、新規感染者数とワクチンの有効率
・学習データの対象都市は、テルアビブ、ロンドン、NY、ブリュッセル
検証のために、その組み合わせを実施。
・テストデータは、東京、大阪、愛知
・ワクチンの有効性を明示的に定義する必要がない。
・計算における平均的な場合を中位ケース(1回目65%、2回目75%)となるように学習。
・3回目の有効性は、2回目と同一と仮定(最悪の場合を仮定)
9月下旬に緊急事態宣言を解除した場合
東京都 新規陽性者数、重症者数
・人流は、緊急事態宣言解除より、線形に上昇。2022年3月末で現在より20%上昇を仮定
・ワクチンの有効率,接種人口割合を近似的に考慮
9月下旬に緊急事態宣言を解除した場合
・人流は、緊急事態宣言解除より、線形に上昇。2022年3月末で現在より20%上昇を仮定
・ワクチンの有効率,接種人口割合を近似的に考慮
9月下旬に緊急事態宣言を解除した場合
大阪府 新規陽性者数、重症者数
・人流は、緊急事態宣言解除より、線形に上昇。2022年3月末で現在より20%上昇を仮定
・ワクチンの有効率,接種人口割合を近似的に考慮
9月下旬に緊急事態宣言を解除した場合
・人流は、緊急事態宣言解除より、線形に上昇。2022年3月末で現在より20%上昇を仮定
・ワクチンの有効率,接種人口割合を近似的に考慮
緊急事態宣言解除のタイミング(東京)
・予測値の下限を推移
・7月、8月の急激な上昇は連休の行動によるもの(予測困難)、8月中旬からの減少は行動の抑制とワクチン効果
・500人以下程度、現状では9月末から10月中旬(より安全側の場合)が、今後の新規陽性者数を抑制する目安
人流を変化させた場合の予測値の変化(9月末)に緊急事態宣言を解除
東京都 新規陽性者数
上図:ばらつき幅の目安
下図:平均的な推移の結果のみ
分析結果のまとめ
1.第5波のピークは、特に、7月の連休(東京)およびお盆(東京、大阪)の行動のよるもの。その1週間程度後に、実効再生産数が上昇(8/24、8/31資料)。
2.ピーク後の陽性者数の減少は、ワクチンによる影響が大きい。イスラエルの事例解析より、現在の我が国の接種率では、ワクチン実効再生産数が約半分と推定( 8/24資料) 。
3.デルタ株に対する我が国における実効再生産数は、海外よりも小さい。行動の大きな変化がなければ今後1を大幅に超えることは生じない推定結果。
4.東京、大阪においても10月中旬以降、新規感染者数、重症者数がほぼ横ばい推移。1月上旬(正月後)、3月(卒業シーズン)にピークが見られる可能性。
5.ワクチン接種(3回目)については、効果の減少が見られるのであれば、年内に開始すると効果が高い可能性。但し、ワクチンの効果が十分モデル化できていない可能性。本アプローチは海外の結果を外挿しており、またそれが可能であるため、随時更新が望ましい。
6.シンガポールにおける接種証明の影響からは、ワクチン効果を除外できてきないものの、人流ー実効再生産数の関係には影響を与えていない可能性。更なる検討が必要。