オミクロン株の特性を考慮した感染動向の分析
2021年12月公表分のサマリー
・ブースター接種を2回目接種後6か月とした場合の効果は顕著
・ブースター接種が8か月後の場合、ワクチンパスポートは、ブースター未接種者の外出を平時比▲50%とすれば、感染拡大を防げる
・感染者数や重症者数のレベルは、感染力や重症化率などのパラメータの設定によって大きく変わる
<2021年12月公表分資料で、感染力を高く見積もっていた可能性>
・世代時間がデルタ株の半分であることを考慮していなかった
・検査について、陽性者の濃厚接触者も受診していることを考慮していなかった
<重症化率を高く見積もっていた可能性>
・中等症および重症になる確率をδ株と同等と設定していた
<シミュレーションのアップデートと、社会的影響への考察>
・上記考察に鑑み、オミクロン株の感染力・重症化リスクを下方修正、世代時間を短縮化
・ブースター接種のスケジュール化(2月から、2度目接種完了順に平均8.5万本/日)
・「濃厚接触者の隔離」がもたらす社会活動の低迷の度合いを考察
サマリー
・定性的な結果はパラメータを変えても維持された
・ブースター接種までの期間を6か月へ短縮化することの効果
・パスポートでブースター未接種者の外出を5割減とすることの効果
・感染力や重症化率の値が低く、2月からのブースター接種が計画通り進めば、パスポート含め強い行動制限なく対応できる可能性が示された
・「陽性者の濃厚接触者の隔離」は強い感染拡大防止効果を持つが、膨大な数の隔離者数を生む可能性が高く、経済への影響が懸念される
エージェント・ベース・モデル
・『ワクチン普及後の行動制限解除』(COVID-19 AI & Simulation Projectとして8/24公開)を基本とする、都内を対象としたモデル
・個人の属性:年齢・性別・産業・職業・外食頻度
・個人の感染・重症化確率は、年代(10歳刻み)、ワクチン接種状況によって決定
・対人接触する場面:家庭、学校、職場、高齢者施設、飲食店、その他不特定多数の接触
・Chiba, Asako. 2021. "The effectiveness of mobility control, shortening of restaurants' opening hours, and working from home on control of COVID-19 spread in Japan" Health & Place 70: 102622.
・Chiba, Asako. 2021. "Modeling the effects of contact-tracing apps on the spread of the coronavirus disease: Mechanisms, conditions, and efficiency" PLoS ONE 16(9): e0256151.
・参考 Kerr et al. (2020)
オミクロン株分析 シナリオ概要
※1 暴露してから発症するまでの期間。
※2 家庭・職場・学校・高齢者施設では、検査陽性者が陽性発覚日の7日前から接触した者全体の9割、飲食店・その他の接触では1割が、濃厚接触者として検査を受診すると想定。この想定に伴い、ウイルスの基礎的な感染力は2021/12/25発表資料から下方修正。
ブースター接種の想定※3
・都内での日次・年代別(10代刻み)のワクチン接種実績を反映
・2022年2月初頭から、ブースター接種を実施
・接種ペースは平均約8.5万人/日として、回目接種を終えた順に実施
→ 2回目接種後、ブースター接種を
受けられるまでの平均日数は236日
※3 2021/12/25提出版では、ワクチン接種状況とブースター接種スケジュールを1か月単位に丸めており、ブースター接種は2回目接種後6か月または8か月と固定していた。
結果:2022年1月中旬以降の分析
2021年12月発表資料の定性的結果は、パラメータを変えても保たれる:
・ブースター接種を6か月後に短縮化することで感染者は顕著に減る
・パスポートでブースター未接種者の外出5割減とすれば感染拡大を抑えられる
濃厚接触者の隔離
・モデル上、濃厚接触者の補足率が100%近くまで高まれば、感染源を早期に絶てるため、結果的に隔離者数は少なくて済む
・現実に100%近い補足率を実現するのは困難であり、膨大な数の隔離者を生むことに
・重症化リスクが極めて低い場合、隔離の相対的コストは高まる
サマリー
・定性的な結果はパラメータを変えても維持された
・ブースター接種までの期間を6か月へ短縮化することの効果
・パスポートでブースター未接種者の外出を5割減とすることの効果
・感染力や重症化率の値が低く、2月からのブースター接種が計画通り進めば、パスポート含め強い行動制限なく対応できる可能性が示された
・「陽性者の濃厚接触者の隔離」は強い感染拡大防止効果を持つが、膨大な数の隔離者数を生む可能性が高く、経済への影響が懸念される