背景
・「感染症対策と社会経済活動の両立」の視点からは、第6波への対応を考える上で第6波での重症化率・致死率の見通しは重要
・「医療逼迫を避けつつ出来るだけ社会・経済・文化・教育活動を継続する」が一つの指針
・正確な重症化率・致死率の予測は、いつ医療逼迫が起こりそうかの正確な予測につながる
・我々は、第6波初期に重症化率・致死率の見通しを示し、モニタリングのサイトを立ち上げた
・2022年1月10日「第6波における重症化率・致死率」(仲田泰祐・岡本亘)
・2022年1月10日「第6波における重症化率・致死率モニタリング」(仲田泰祐・岡本亘)
・2022年1月13日「過去の波における重症化率・致死率推定値の推移」(仲田泰祐・岡本亘)
・本資料では1月に提示した見通しについて、第6波における実データを元に事後的に検証する
重要ポイント
・1月に提示した見通しは第6波における重症化率・致死率が第5波におけるそれらと比較して相当に低くなることを示していたが、現実に重症化率・致死率は大幅に低下した
・実際の重症化率は楽観シナリオと整合的、致死率は基本シナリオと整合的であった
・重症化率の低さはオミクロン株本来の性質による可能性が高い
・重症化率のリアルタイム推定値は、波が収束する2ヶ月以上前にほぼ最終的な値へと収束
・重症化率は 1月24日(波の開始から40日後)にはほぼ最終的な値へと収束
・致死率の収束は 3月上旬(波の開始から80日後)
・第6波だけでなく、過去の波においても同じ傾向
重要ポイント
・第6波開始時には、「波が完全に収束してからでないと重症化率・致死率を把握することは難しい」という意見が支配的であったが、波の初期においても様々な情報から、おおよその見通しを立てることは可能であったということ
・そういった不確実性を一つの根拠に第6波でも強い行動制限政策が打たれた
・波の収束を待ってから正確な重症化率・致死率を推定することについては学術的な価値は認められる
・一方で、政策現場は波が完全に収束するのを待っている余裕はない
重症化率の要因分解
・基本シナリオの重症化率:0.15%をベースに現実のパラメータを考慮し、第6波の現実の値と比較
・ワクチン2回接種者割合を現実と整合的 (75% → 63%)にした場合の重症化率:0.166% (+13%)
・高齢者割合を現実と整合的( 10% → 9.8%)にした場合の重症化率:0.164% (-1.2%)
・一方で、実際の第6波全体の重症化率推定値:0.037% (-77%)
・基本シナリオに比べて、第6波全体の重症化率が大幅に低い理由
・仮説①: オミクロン株の未接種感染者における(デルタ株と比べた相対的な)重症化率が基本シナリオよりも低い
・このパラメータを 30% → 7% とすると、第6波全体の重症化率と整合的になる
・この仮説は重症化率の低さがオミクロン株本来の性質によるものであることを意味する
・仮説②: オミクロン株の2回接種後の(オミクロン株の未接種感染者と比べた相対的な)重症化率が基本シナリオよりも低い
・このパラメータを 40% → 0% にしても、重症化率は 0.164% → 0.098% までしか下がらない
・したがって、仮説②だけで重症化率の低さを説明することは難しい
・仮説③:①と②の二つの要因が寄与
致死率の要因分解
・基本シナリオの致死率:0.094%をベースに現実のパラメータを考慮し、第6波の現実の値と比較
・ワクチン2回接種者割合を現実と整合的( 75% → 63% )にした場合の致死率 :0.107% (+14%)
・高齢者割合を現実と整合的( 10% → 9.8% )にした場合の致死率 :0.105% (-1.9%)
・一方で、実際の第6波全体の致死率推定値:0.109% (+3.8%)
・現実の陽性者割合を加味すると、基本シナリオと実際の致死率はほぼ変わらない
・ただし、基本シナリオの残り2つのパラメータが正しいとは限らない
例) 基本シナリオのパラメータを
オミクロン株の未接種感染者における(デルタ株と比べた相対的な)致死率:30% → 40%
オミクロン株の2回接種後の(オミクロン株の未接種感染者と比べた相対的な)致死率: 40% → 15%
と変更しても、同じ致死率が得られる
第6波における新規陽性者数に占める高齢者(60歳以上)の割合
第6波における新規陽性者数に占めるワクチン2回接種者の割合