- HOME
- 研究結果報告
- 感染状況シミュレーション
- 保育園休園の分析
保育園休園の分析
- 公開日
- 2022.09.13
- 研究者
- 千葉安佐子
- 機 関
- 公益財団法人東京財団政策研究所
/
-
東京大学
サマリー
・コロナ禍が長期化する中で、保育園の休園が増加
・特に第六波では、保育園の休園数が激増
・休園のコスト:「園児一人の1日の自宅待機」は「労働者一人の生産1日分の損失」を意味(⇔休校)
・休園(休校)の児童への影響については分析事例が多い一方、休園(休校)の実態は不明
・休園数の公表データは、全国レベルのストック値(厚労省、1~2週間に1度更新)
・関心事① 休園・休校の状況
・第6波、第7波において、1園当たり休園期間は何日に及んだのか?
・児童/職員の感染事例が何件あった場合に休園が決定されたのか?
・自治体間で休園状況に差はあったのか? (都市vs地方、など)
・関心事② 休園による保護者の就労への影響
・本分析では、①休園・休校の状況を分析
・各自治体における休園(休校)事例の公開状況から、自治体ごとの休園(休校)状況に関するデータを作成
(東京23区、及び周辺3県の市部が対象)
・データを元に定量分析
保育園休園数のプロジェクション
推計モデル
・休園日数が平均d(t)日の指数分布に従うと仮定
・N(t) = N(t-1) + ΔN(t) - 7/d(t)* N(t-1)
・N(t) : 時点tにおける休園数
・ΔN(t) : 時点tにおける新規休園数
・d(t) : 時点tにおける休園日数
推計モデルにおける休園日数の定義
・保育園の休園日数の規定はない
・文部科学省の定める休校日数※1は、一般的な濃厚接触者の隔離期間※2に連動
・本推計では、自治体レベルでのデータを根拠に、保育園の休園日数を定義
(一般的な濃厚接触者の隔離期間とほぼ連動)

推計結果(全期間)
全国の10歳未満の陽性者数※3を説明変数としたOLS推計
※3 全国の新規陽性者数(7日間移動平均)と都内の陽性者に占める10歳未満の割合から算出
https://toyokeizai.net/sp/visual/tko/covid19/csv/pcr_positive_daily.csv
https://stopcovid19.metro.tokyo.lg.jp/data/130001_tokyo_covid19_patients.csv

推計結果(2022年5月以降)
・全国の10歳未満の陽性者数※3を説明変数としたOLS推計
・7/28時点での休園数の推計値:32(0〜84)
※3 全国の新規陽性者数(7日間移動平均)と都内の陽性者に占める10歳未満の割合から算出
https://toyokeizai.net/sp/visual/tko/covid19/csv/pcr_positive_daily.csv
https://stopcovid19.metro.tokyo.lg.jp/data/130001_tokyo_covid19_patients.csv

8月下旬までの見通し:シナリオ

8月下旬までの見通し
・今後感染が収まるのならば、休園数は速やかに減少
・仮に感染収束に時間がかかるのであれば、休園数の減少ペースは遅い
・直近での陽性率の上昇(7/29時点で51%)は、検査陽性者数が正しく感染状況を反映していない可能性を示唆※4
※4 https://stopcovid19.metro.tokyo.lg.jp/cards/positive-rate/

現時点における分析
休園期間
・第6波の感染拡大局面で(2022年1月)、ガイドラインが改訂され、休園期間の目安は短縮化された
・しかし実際は、いくつかの自治体で、逆に休園期間が延びた
・保健所によるチェック・施設の除菌作業・職員のPCR検査が逼迫し、保育の再開までに時間を要した可能性
・2月以降は、多くの自治体で休園期間が短縮化した
・第7波では、さらに短縮化
休園の根拠となる感染児童数/感染職員数
・第7波では、第6波に比べ、休園決定時点での職員の感染者数が児童の感染者数よりも相対的に増加した
・第6波までの休園は、濃厚接触者の追跡・隔離政策の一環として実施(さらなる感染拡大の予防)
・第7波における休園は、職員が感染したことで保育サービスが提供できずに休園を余儀なくされたケースが増加した可能性
全国の認可保育園の休園数
・2月を通して、700以上の認可保育園が全面休園
保育所等における新型コロナウイルスによる休園等の状況
https://www.mhlw.go.jp/content/11920000/000897067.pdf

休園により保育園に通えなかった児童の数
(2月末時点での推計)
・認可保育所等の全面休園数※1
・認可外保育所等を考慮※2、3
・認可保育所等と同規模で発生していると想定
・一部休園を考慮
・一部休園は、全面休園と同規模で発生していると想定※4
・一部休園で影響を受ける児童数は、各学級が約10-25人で構成されると想定して算出※5
※1 厚生労働省、保育所等における新型コロナウイルスによる休園等の状況
https://www.mhlw.go.jp/content/11920000/000903525.pdf
※2 厚生労働省、保育所等関連状況取りまとめ(令和3年4月1日)
https://www.mhlw.go.jp/content/11922000/000821949.pdf
※3 厚生労働省、令和元年度認可外保育施設現況取りまとめ
https://www.mhlw.go.jp/content/11907000/000816821.pdf
※4 文部科学省、新型コロナウイルス感染症の影響による臨時休業状況調査の結果について
https://www.mext.go.jp/content/20220218-mxt_kenshoku-000006590_1.pdf
※5 幼稚園・保育所における乳幼児の適正人数に関する研究
https://core.ac.uk/download/pdf/147574904.pdf
モバイル空間統計データ(人口増減)
・影響度大:認可外保育所の休園規模が2倍、一部休園の規模が1.5倍
・影響度小:認可外保育所の休園規模が半分、一部休園の規模が半分
・2月に渡り、一部・全面休園により約9万人(7~14万人)の児童が通園できなかった
→ 在園児童数299万人の3%(2~5%)に相当

データ
自治体レベルデータの構築
ソース
・市区町村のホームページ上での、休園・休校事例のアナウンス
対象自治体
・東京都23区と、千葉県・埼玉県・神奈川県の市部を対象
・データが得られた自治体の数
・東京都:11
・千葉県:2
・埼玉県:1
・神奈川県:1
期間の定義
・第6波:2022年1月1日~ 2022年6月14日
・第7波:2022年6月15日~
自治体レベルデータの構築

休園日数の推移
休園日数に関する政策の推移
・保育園の休園日数の規定はない
・文部科学省の定める休校日数※1は、一般的な濃厚接触者の隔離期間※2に連動
・保育園の休園日数も、学校の休校と同様、濃厚接触者の隔離期間に連動していると想定される
※1 https://www.mext.go.jp/content/20220113-mxt_kouhou01-000004520_1.pdf
https://www.mext.go.jp/content/20220202-mxt_kouhou01-000004520_2.pdf
※2 https://www.mhlw.go.jp/content/000889667.pdf

第6波における
休園日数の推移

第6波における
休園日数の推移

第6波から第7波での
休園日数の推移

第6波から第7波での
休園日数の推移

休園の根拠となる感染事例
第6波と第7波における
休園の根拠となった感染児童数

第6波と第7波における
休園の根拠となった感染職員数

第6波と第7波における
休園根拠に占める感染職員数の割合

サマリー
これまでの分析から
・第6波の感染拡大期には、ガイドライン上の休園日数が短縮化された一方で、実際には日数が延びていた自治体もあった
・休園の根拠となる感染事例は、第7波においては職員のウェイトが高い自治体もあった
今後
・濃厚接触者の追跡・隔離政策の自治体間の違いを考慮
・データの拡充化(周辺3県にも拡大/休校も調査)