今回の内容
(1)東京都モニタリング会議資料(2022/7/14)1に基づき、BA.2系統からBA.5系統への移行を再設定、
9月末までの新規陽性者数、死者数を予測する。
・ BA.5系統の感染力を下記の通りと仮定し、予測を行った。但し、これまでの文献2,3からは、その定量的な値は示されていないため、近似的に設定。
- BA.2系統に対して、感染力が1.3倍*、ワクチンによる感染予防効果が7割に低下する。
・ 60歳以上に対する4回目接種を、3回目接種から5カ月後(実測値ベース)に行ったと仮定。
*その他のデータとの年齢区分のため、推定結果は0-9歳、10-64歳、65歳以上とする。
*無症状感染者数は、新規陽性者数の8倍いると仮定。
*感染力の強さは、実効再生産数を指標として定義。
(2)東京都プレスリリースによる新規陽性者のワクチン接種状況を用いて、ワクチン2回接種者が、主要な
変異株に対してどの程度の感染予防効果を有しているかの割合を推定し、AIの入力値であるワクチン
有効率4と比較。
・ Twitterの数の増加に伴い、ワクチンの感染予防効果の減少を確認
1. https://www.bousai.metro.tokyo.lg.jp/taisaku/saigai/1021348/1021756.html
2. Hachmann NP. et al.. 2022. “Neutralization Escape by the SARS-CoV-2 Omicron Variants BA.2.12.1 and BA.4/BA.5.” MedRxiv. https://www.medrxiv.org/content/10.1101/2022.05.16.22275151v1. (preprint)
3. Wang Q. et al.. 2022. “SARS-CoV-2 Omicron BA.2.12.1, BA.4, and BA.5 subvariants evolved to extend antibody evasion.” bioRxiv. https://www.biorxiv.org/content/10.1101/2022.05.26.493517v1. (preprint)
(前提条件)BA.5系統への推移
東京都モニタリング会議資料(2022/7/14)1より作成
7/14現在では、BA.5系統への推移(赤実線)の傾向は、BA.2系統への推移(緑)とほぼ一致。
感染研は、 BA.5系統は7月第2週に50%超、7月中にほぼ全て置き換わると試算している2ことから、
赤点線のように推移すると仮定した。
1週目に相当する週は、BA.5(2022.5.24-5.30)、BA.2(2022.2. 8-2.14)、オミクロン株(2021.12.14-12.20)、デルタ株(2021.5.3-5.9)
1. https://www.bousai.metro.tokyo.lg.jp/taisaku/saigai/1021348/1021840.html
2. https://www.m3.com/news/general/1057642
東京における新規陽性者数推定結果
人流・行動は、7月中旬以降、感染拡大に伴い、ゆるやかに低下すると仮定。
BA.5系統の感染力はBA.2系統の1.3倍、60歳以上4回目ワクチン接種は3回目接種の5カ月後から開始すると仮定。
* 感染力の倍率は実効再生産数ベース ** 感染拡大に伴う行動の自然抑制は、ワーストケースを想定し、控えめに設定
東京における重症者数試算結果
* 年代別の重症者数データが入手困難なため、全年代の重症者数を対象として以下の仮定で試算。
重症者数の9割以上が60歳以上1であることから、全年代の重症者数すべてが65歳以上と仮定して試算。
BA.5系統の感染力は、 BA.2系統に対して1.3倍(実効再生産ベース)、ワクチンによる重症化予防効果はBA.2系統に対して、10%低減する(9割に低下) 2と仮定した。
* 重症者数は東京都の基準による
1. 第80回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000121431_00333.html)
2. NP Hachmann, Neutralization Escape by SARS-CoV-2 Omicron Subvariants BA. 2.12. 1, BA. 4, and BA.5, N Engl J Med, 2022
今後のワクチン感染予防効果の推移
無症状感染者を8倍と仮定した場合、ピークをつけるのは7月26日ごろ 。その場合でも集団での感染予防効果は従来ほど強くない。
3回目接種者数により前後する可能性。
換気、猛暑によるワクチンの感染予防効果の推移により、前後する可能性。
前提条件と限界
・BA5系統に代表される新規変異株の感染力(1.3倍)および免疫回避(感染予防効果低減50%.重症化予防効果低減10%)を仮定し、新規陽性者数および死者数を試算。
・感染予防と重症化には、相互関係があるため補完する可能性。
・➀これまでと同程度に個々人の感染対策が実施され、かつ②PCR検査数は、前回と同程度に実施されると仮定。後者は検査数によって、推定値が飽和している可能性。
・換気(気象)の影響は考慮していない。
参考:年代別新規陽性者数予測モデル
対象年代カテゴリを、0-9歳、10-64歳、65歳以上の3区分とし、深層学習(LSTMモデル)に基づき、それぞれの年代の過去の陽性者数・死者数、ワクチン有効率を入力することで、年代別の新規陽性者数・死者数を予測するモデルを開発。
これまで開発してきた各都市における全人口を対象とした予測モデルを拡張し、年代(10歳未満、10-64歳、65歳以上)カテゴリを分けることで、各年代の特徴を考慮。また、ワクチンの4回目接種率の感染状況への影響も推計した。
*NTTデータから提供されたTwitterデータを用いて東京大学生産技術研究所豊田研にて作成
1. E. A. Rashed and A. Hirata, “Infectivity upsurge by COVID-19 viral variants in Japan: evidence from a deep learning modeling.” Int. J. Environ. Res. Public Health, 2021.