サマリー
■9月7日、第7波における陽性者の隔離期間が短縮化(有症者の場合、10日→7日に)
https://www.mhlw.go.jp/content/000987035.pdf
■本分析では、エージェント・ベース・モデルを用いた反実仮想実験により、上記対策を評価
『仮に第7波初期から隔離期間を短縮化していた場合、感染拡大はしていたのか』
仮定
■8月中旬のピーク時までの感染者数・入院患者数にターゲット
■有症者検査率(値は不明)に関して、①低い場合と②高い場合を考慮
結果
■隔離期間短縮化の影響は有症者検査率に依存する
■①有症者検査率が低い場合、隔離期間は7日でも10日でも感染動向がほとんど変わらない
■②有症者検査率が高い場合、隔離期間を10日から7日すると、感染はやや拡大
■入院患者数(日々ベース)が2,000人程度増加
解釈
■検査の効果は、感染者の特定・隔離によってさらなる感染拡大を防ぐこと
■陽性者の隔離期間短縮化は、検査の効果を弱める
■有症者検査率が低い場合、検査の感染動向への寄与度が小さい→隔離期間を短縮化しても全体の感染動向に大きな影響がない
含意
■8月時点で検査は逼迫(有症者検査率の低下につながる)→隔離期間の短縮化は9月より前に実施していても良かった可能性
■仮に検査数の拡大により感染拡大を防止するならば、隔離期間の短縮化には慎重になるべき
モデルの概要
■東京都を対象としたエージェント・ベース・モデル
■個人の属性:年齢・性別・産業・職業・外食頻度
■対人接触する場面:家庭、学校、職場、高齢者施設、飲食店、その他
■個人の感染確率は、年齢・接触場面・ワクチン接種状況によって決定
■Chiba, Asako. 2021. "The effectiveness of mobility control, shortening of restaurants' opening
hours, and working from home on control of COVID-19 spread in Japan" Health & Place 70:
102622.
■Chiba, Asako. 2021. "Modeling the effects of contact-tracing apps on the spread of the
coronavirus disease: Mechanisms, conditions, and efficiency" PLoS ONE 16(9): e0256151.
参考 Kerr et al. (2020)
想定シナリオ
第7波発生~8月半ばに至るまでの対策を再現
<検査>
■有症者の一定割合※がPCRまたは抗原検査を受診(※本分析では、70%の場合と30%の場合を計算)
■受診者の60%はPCR検査を受診、残り40%は抗原検査を受診
■検査の感度は、PCR検査では70%、抗原検査では50%
■受診後、2日後に結果通知 → 陽性者は回復するまで隔離
■隔離期間中は、一切の接触が絶たれる
<濃厚接触者の追跡・自宅待機>
■濃厚接触者(陽性者の家族、及び高齢者施設での同居者)は直ちに自宅待機
■自宅待機期間は、2日
■自宅待機期間中は、家庭と高齢者施設における接触は平時と同様に、それ以外での接触は平時比90%減少する
■実施率は80%
(参考)東京都における濃厚接触者の扱い
https://www.fukushihoken.metro.tokyo.lg.jp/tamafuchu/shingata_corona/corona_sesshoku.html
陽性者との最終接触日を0日として5日間(6日目に解除)が原則。
2日目及び3日目に抗原定性検査により陰性が確認された場合は、3日目から待機解除することが可能。