シミュレーションについて
当シミュレーションではSIRDモデルに経済活動を組み込み、感染症の拡大リスクと経済損失を同時に分析する。
シミュレーションには下記のパラメータ及び予測値を使用。モデルに当てはめる前にパラメータ群を推計している。
パラメータ
・人流とGDPの関係
・デルタ型変異株割合(陽性者のうちのデルタ株感染者の割合)
・重症化率(陽性者のうちの重症化者数の割合)
・死亡率(陽性者のうちの死亡者数の割合)
・入院率(陽性者のうちの入院率数の割合)
予測値
・1日あたりの新規感染者数の増減の経過(月曜日から日曜日までの感染者数の平均人数)
・1日あたりのワクチン接種本数
モデル詳細
Fujii and Nakata , “Covid-19 and Output in Japan",
https://covid19outputjapan.github.io/JP/files/FujiiNakata_Covid19.pdf
提示するシナリオ
今後感染を抑制するための追加的な措置が取られず、感染が広まり医療が逼迫することで人々が自主的に行動変容(人との接触の抑制等)をする、というシナリオに基づき、楽観的シナリオと悲観的シナリオのを二つ提示。
デルタ型変異株割合の仮定
デルタ型変異株割合は、7月末に8割に達すると仮定。
接触率パラメター(楽観・悲観)
7月中旬以降、感染が広まり医療が逼迫することで人々が自主的に行動変容する(=人と人の接触が少なくなる)と仮定。
重症化率仮定(楽観・悲観共通)
※国基準は都基準と比べて対象をより広く捉えるため、割合が高くなっている。
入院率・致死率仮定(楽観・悲観共通)
※ワクチン接種等の影響により、死亡率・入院率は今までより低下すると仮定。
自主的な行動変容による感染拡大抑制シナリオ(楽観)
pp.4-8で示すモデルのパラメータ以外の前提は下記のとおり。
※ 重症患者の基準
・都基準:人工呼吸管理またはECMOを使用している患者 ・国基準: 集中治療室(ICU)等での管理、人工呼吸器管理又は体外式心肺補助(ECMO)による管理が必要な患者
※ 新規感染者数の前提(楽観シナリオ):8月1週目まで新規感染者数は上昇し続け、その後減少すると仮定
※ ワクチン接種ペース見通しは8月末まで1日120万本(全国換算、このうち高齢者は70万本)、その後1日90万本と仮定(楽観・悲観共通)
※詳細解説はp.11に記載
自主的な行動変容による感染拡大抑制シナリオ(悲観)
pp.4-8で示すモデルのパラメータ以外の前提は下記のとおり。
※ 重症患者の基準
・都基準:人工呼吸管理またはECMOを使用している患者 ・国基準: 集中治療室(ICU)等での管理、人工呼吸器管理又は体外式心肺補助(ECMO)による管理が必要な患者
※ 新規感染者数の前提(悲観シナリオ):8月2週目まで新規感染者数は上昇し続け、その後減少すると仮定
※ ワクチン接種ペース見通しは8月末まで1日120万本(全国換算、このうち高齢者は70万本)、その後1日90万本と仮定(楽観・悲観共通)
※詳細解説はp.11に記載
自主的な行動変容による感染拡大抑制シナリオ(pp.9-10の分析詳細)
■図では、今後感染を抑制するための追加的な措置が取られず、感染が広まり医療が逼迫することで人々が自主的に行動変容する、というシナリオを二つ(楽観・悲観)提示。
■日本での自主的な行動変容の研究はWatanabe and Yabu (2021): Japan's Voluntary Lockdown: Further Evidence Based on Age-Specific Mobile Location Dataを参照して下さい。
■左(真ん中・右)の黒の縦実線が現在時点(8月第4週・ 9月第4週)。二つの細い青線は推定しているパラメター(人流とGDPの関係、接触率、致死率、重症化率、入院率)がそれぞれpoint estimateよりも1 standard deviation離れている場合。
■下段右のパネルは、1年後の累計死亡者数(これまでの死亡者数を含む)と今後1年間の経済損失。中段右パネルはその地域における月次GDP(近い将来公表する論文で推定方法の詳細を説明します)。
■アルファ型変異株感染力が従来株の1.3倍、重症化率・致死率は1.4倍と仮定。デルタ型変異株の感染力はアルファ型変異株の1.3倍、重症化率・致死率はアルファ株の1.1倍と仮定。デルタ型変異株割合は、7月末に8割に達すると仮定。
■楽観の場合は8月1週目まで、悲観の場合は8月2週目まで新規感染者数は上昇し続け、その後減少すると仮定。
■ワクチン接種ペース見通しは8月末まで1日120万本(全国換算、このうち高齢者は70万本)、その後1日90万本と仮定。ワクチン接種希望者は高齢者が87.5%・高齢者以外は7割と仮定(15歳以上の希望者が8割と仮定で、15歳未満は未接種と仮定)。ワクチンの効果は「SPI-M-O: Summary of further modelling of easing restrictions – Roadmap Step 4, 9 July 2021」と整合的。モデルの詳細についてはFujii and Nakata(2021)を参照して下さい。
使用しているモデル
■疫学マクロモデル
■Fujii and Nakata (2021): Covid-19 and Output in Japan
■ https://covid19outputjapan.github.io/JP/,
https://covid19outputjapan.github.io/JP/resources.html
■シンプルな疫学モデルにシンプルな形で経済活動を追加
■参考資料:「経済モデルに基づく政策分析・提言」、「シンプルなモデルに基づく政策分析・提言」
■「今後、経済活動がこのように推移すると、このように感染者数・重症患者数は推移する」という計算
■疫学モデルでは「今後、実効再生産数がこのように推移すると、このように感染者数・重症患者数は推移する」という計算
■過去のデータから「人流と感染の関係」・「人流と経済活動の関係」を推定
■「コロナ感染と経済活動」を同時に分析
■中・長期の見通しを提示
■これまでと今後のデルタ型変異株割合の推移を考慮
■これまでと今後のワクチン接種の推移を考慮
■高齢者ワクチン接種により、全体の重症化率・致死率が減少していくこと、感染の主体が若者に移行することにより接触率が上昇していくことを、パラメター調整によって考慮