背景と概要
■デルタ株の爆発的な感染拡大も東京では8月19日をピークに新規陽性患者数が減り始めた。
■重症者数も減少に向かう兆しが見え始めたが、数は依然多く、十分な治療を提供するには更なる減少が必要。
■9月末まで延長された緊急事態宣言の後の戦略を考える必要あり。
■ワクチン接種の進捗の下で、行動制限緩和による経済・文化活動の復活と感染状況のバランスを考える必要あり。
■10月以降、昨年秋と同程度の制限に緩和した場合を想定したシナリオについてシミュレーションを実施。
■ワクチンの最終接種率が 75% 以下では、再度の強い行動規制が必要になると思われる。
■年末に2020年末と同等の接触機会の増加があると、2022年1月に2021年1月の第3波と似た感染拡大が発生すると思われる。
→ 規模はワクチン接種率と行動制限の程度に依存。
■ワクチン接種による免疫効果の経時的減衰により、行動の程度に応じて感染が拡大する。
→ これを抑制するにはブースタショットが必要と思われる。
シミュレーション
■2次元空間上を移動するマルチエージェントモデル。
■エージェント数 100万。1日12ステップ。各パラメータ設定につき64試行。
■昨年12月22日から今年8月14日までの64回の試行から、実データに近いもの4つを選び、それらの継続として以後のシミュレーションを16回ずつ計64回実行し、平均と標準偏差を見る。
■ワクチンの最終接種率が人口の 70, 75, 80, 85% の各場合について2022年3月末までのシミュレーションを実施。
■ワクチン接種による予防効果は、2回目接種後114日目から線形に減衰し214日目に消失すると仮定。
■今年11月、または、2022年2月に行動制限をなくす、あるいは、その後もある程度の制限を持続する場合を比較。
■年末に昨年と同等の接触機会の増加があるものと想定。
*接種証明、陰性証明、ブースタショットは想定しない。
■#1 新規陽性患者数の推移(4ページ)
■#2 重症者数の推移(5ページ)ー シミュレータ内での重症度の基準を東京都の推移をもとに調整。
■#3 市中不顕性感染者(無症状かつ未検査の感染者)数の推移(6ページ)
■#4 2022年1月ピーク時および2022年3月末の新規陽性患者数の比較(7ページ)
■#5 2022年1月ピーク時および2022年3月末の重症者数の比較(8ページ)
シミュレーション結果#1 新規陽性患者数の推移
■ワクチン最終接種率75%以下では感染再拡大の可能性が高い。
■接種率80%以上では行動制限を持続すれば爆発的な拡大は抑止できそうだが、陽性患者数は高いレベルで継続。
■規制を撤廃すると感染再拡大の恐れがある。特に2月の撤廃は、接種率85%でも拡大につながる恐れがある。
シミュレーション結果#4 2022年1月ピーク時および2022年3月末の新規陽性患者数の比較
■ワクチン最終接種率75%以下では感染再拡大の可能性が高い。
■接種率80%以上では行動制限を持続すれば爆発的な拡大は抑止できそうだが、陽性患者数は高いレベルで継続。
■規制を撤廃すると感染再拡大の恐れがある。特に2月の撤廃は、接種率85%でも拡大につながる恐れがある。
※11月解除では、1月の感染拡大が非常に大きいため、感染による免疫獲得で3月の感染は抑制される。
2月解除では1月の感染拡大が小さいため、11月解除の場合より3月の陽性患者数は多くなる。
シミュレーション結果#5 2022年1月ピーク時および2022年3月末の重症者数の比較
■接種率75%以下では、2022年1月には2021年9月の水準以上まで重症者数が増えてしまう。
■接種率75%以下では、速やかなブースターショットやワクチンパスポート、緊急事態宣言の繰り返しなどの別の対策が必要である。
■接種率80%以上であれば、2022年1月のピーク時でも医療崩壊までは至らないと思われる。
※11月解除では、1月の感染拡大が非常に大きいため、感染による免疫獲得で3月の感染は抑制される。
2月解除では1月の感染拡大が小さいため、11月解除の場合より3月の陽性患者数は多くなる。
シミュレーション結果からの示唆
■ワクチンの最終接種率が 75% 以下では、再度の強い行動規制が必要になると思われる。
■ワクチン接種率が80%以上を達成でき、緩くても行動規制を続ければ、大規模な感染再拡大は起きにくいとみられる。
■年末に2020年末と同等の接触機会の増加があると、2022年1月に2021年1月の第3波と似た感染拡大が発生すると思われる。
→ 規模はワクチン接種率と行動制限の程度に依存。
■ワクチン接種による免疫効果の経時的減衰により、行動の程度に応じて感染が拡大する。
→ これを抑制するにはブースタショットが必要と思われる。
■ワクチン接種率が80%以上を達成できれば、緩くても行動規制を続ける限り大きな再拡大は起きにくいとみられる。
■しかし、免疫効果の経時的減衰により、感染者数が高い状態が持続する可能性が示唆される。
■経済・文化活動を復活させるには、接種証明、陰性証明、ブースタショット等の導入・実施について考える必要があろう。
詳細はこちら→ http://www.intlab.soka.ac.jp/~unemi/SimEpidemic1/info/simepidemic_sim_emg2109C.html
補足:シミュレーションにおける仮定およびグラフの見方